3話 その項目に ページ5
『ちょ、投げることないじゃないッスか!!?』
「場を弁えろ!!
あんた、今斬られそうに...っ!?」
「がら空きだぜ!!」
放り投げられて尻餅を着くA。
受け身なしでの直撃であった為、若干涙目になりながらも自身を放り投げた張本人である山姥切にギャンギャンと吠え掛かった。
足元にしがみつく主を、刀を構えながら足蹴にする山姥切...ここの主従関係はどうなっているのやら。
そんな騒がしい彼らを、黙って見てはいられないようで。
部屋の中に押し戻されていた刀剣が、再び獲物を振り上げ襲い掛かってきた。
走る勢いそのままに、真っ直ぐに足蹴にされている男...Aへと斬り掛かっていく。
山姥切はAを横に押し出し、迫り来る刃を受け止めた。
「チッ...何故だ、何故邪魔をする!」
「こんなちゃらんぽらんでも、一応俺の主だからな...主を守るのが、俺たち刀剣男士の使命だ」
『ちょっと〜?何か貶されてるような気がするんスけど〜?』
二度に渡って妨害された刀剣はその美しい顔を歪ませ、斬りつける刃に力を込める。
それに合わせ、山姥切も獲物を握る手に力を込めていった。
こんな殺伐とした空間で、押し出されたAは胡座を掻いて観戦を決め込んでいた。
「主?ハッ、笑わせるな。
人間は全て同じ...俺たちを蔑み、必要なしと決めればすぐに折る。
俺たちを...すぐに、見捨てる...!」
「...」
形よい唇を噛み、悲しみに溺れる刀剣...獲物を握る手から、赤い体液が零れ落ちていった。
白い腕を伝う血液に、山姥切は目を細める。
長い廊下に、不気味な程に静かな沈黙が訪れた。
『じゃあ、俺は違うッスね』
突如、その沈黙を破る気の抜けた声が谺した。
胡座を掻いて観戦を決め込んでいた男...Aである。
彼は組んでいた足を解いて立ち上がり、真っ直ぐに刀剣たちの方へと歩み寄っていく。
刀剣は悲しみに歪ませていた表情を、再び殺気立ったものに切り替えた。
「...違う?ふざけるな。
さっきも言っただろう...人間は、全て同じだと!」
『うん、確かにそう言ったッスね...ただ』
「な!?おい、馬鹿止めろ!!」
慟哭する刀剣に、頷いて肯定の意を示すA。
彼の、先の行動が感付いた山姥切は、慌てたように制止の声を掛ける。
...しかし、時既に遅し。
『その“全て”の項目に、俺は入って居ない』
刀剣の刃を、新しい血液が伝っていった。
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あ - 更新待ってます (2017年11月29日 1時) (レス) id: e1ae95dbc2 (このIDを非表示/違反報告)
柚希 - 面白いです!続きが気になります。更新楽しみに待ってます(゜∇^d)!!(゜∇^d)!! (2017年4月30日 10時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
ぬっこりアロエ - 1でッ!!!!! (2017年3月21日 20時) (レス) id: 0d3966aac5 (このIDを非表示/違反報告)
トゥクルカ(プロフ) - 1でお願いします!続き楽しみにしてます! (2017年3月20日 11時) (レス) id: 77391b8609 (このIDを非表示/違反報告)
ヴェルさん(プロフ) - 2が良いです。鶴丸にはホワイト本丸の味を知ってほしいです…ブラックな家族が顕現したら耐えられないとも思いますし... (2017年3月20日 11時) (レス) id: 8a36f75a5a (このIDを非表示/違反報告)
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