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21話 慈悲なき刃 ページ23

先ほどまで拓けていた青空を、途端に曇天が覆い尽くす。


暗がりの中、一振りの刀剣...薙刀だけが不気味な光を纏っていた。



視覚化された黒い靄は、この世のものとは思えないほどに悲しく...哀愁を帯びていた。




「岩、融...?」




鶴丸が引き釣った声で、その薙刀の名を呼ぶ。


Aを守るようにして立つ鶯丸が、静かな動作で腰に帯刀した獲物へと手を掛けた。



返答は、無かった。




「刀を抜け、鶴丸。

...アレは、お前の知っている岩融じゃない」




未だ呆然としている鶴丸に、抜刀を促す鶯丸。


その声は、とても冷たいもののように聞こえた。



唇を噛み締め、鶴丸も獲物を引き抜いて構える...





...と、ほぼ同時に勢いよく斬り掛かってきた薙刀を、鶯丸が受け止めた。


薙刀は忌々しげに、邪魔をしてきた鶯丸を睨み付けた。




『うぐたん!!』



「このくらい大丈夫だ。

Aは早く、結界を...っ!?」




慌てて駆け寄ろうとする主を、声だけで制する鶯丸...しかし。


それを隙と見た薙刀は、鶯丸の開けている腹部を思いっきり蹴り上げた。



鶯丸は咄嗟に身構え、追撃を警戒するも時既に遅し。




「...っ!」



「鶯丸!」



『うぐたん!!』




宙に浮き上がった彼の身体を、薙刀が蹴り飛ばして遠くへと吹っ飛ばした。


空中で身動きの取れなかった鶯丸は成す統べなく、砂利の敷かれた庭を転がっていく。



そのすぐ後ろを、Aが追い掛けていった。




「...ぜ」



「...え?」




駆け出したAを追って走り出す鶴丸の耳に、低い唸りのような声が入り込んできた。


咄嗟に足を止め、後ろを振り返る。




「...何故、俺ヲ呼ビダシタ...何故、アノママ還シテクレナカッタ...!」



「...っ、」




獲物を握る手に力を込め、光を失った瞳から涙を溢す薙刀。


鶴丸は唇を噛み締め、己の拳を強く握り締めた。




「...っ、鶴丸!!Aを守れ!!」




上半身を起こす鶯丸の声が、庭中に響き渡った。


ハッとして後ろを振り返った鶴丸の目に写った光景...それは。




「人間ハ、狩リ尽クス...スベテ!」




鶯丸の元へ駆け付けるAを、薙ぎ払わんとする薙刀の姿であった。


後ろから迫る殺気に気付くも...もう遅い。




「...っ、“A”!!」




慈悲なく振り下ろされる刃に、鶴丸も鶯丸も自身の主へと手を伸ばした。







「...ったく、あんたらは何やってるんだ」




一振りの、呆れたような声が庭に響いた。

22話 二振りの守護刀→←20話 一難去って



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- 更新待ってます (2017年11月29日 1時) (レス) id: e1ae95dbc2 (このIDを非表示/違反報告)
柚希 - 面白いです!続きが気になります。更新楽しみに待ってます(゜∇^d)!!(゜∇^d)!! (2017年4月30日 10時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
ぬっこりアロエ - 1でッ!!!!! (2017年3月21日 20時) (レス) id: 0d3966aac5 (このIDを非表示/違反報告)
トゥクルカ(プロフ) - 1でお願いします!続き楽しみにしてます! (2017年3月20日 11時) (レス) id: 77391b8609 (このIDを非表示/違反報告)
ヴェルさん(プロフ) - 2が良いです。鶴丸にはホワイト本丸の味を知ってほしいです…ブラックな家族が顕現したら耐えられないとも思いますし... (2017年3月20日 11時) (レス) id: 8a36f75a5a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:杏仁豆腐 x他2人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年3月14日 21時

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