episode-25 ページ27
泣いても泣いても枯れない。時間を忘れて、惚れた女
〜〜♫〜♫
「……えっ？」
どれくらい経った頃だっただろうか、ポケットに入れていたスマホの着信音で、僕ら二人は現実に戻された。恐らく学園長だろう。僕らの帰りが遅いから連絡を入れてきたのだろうか。無視する訳にも行かないので、涙声のまま電話に出る。
「はい、もしもし……」
「大変なんです！監督生くん！グリムくんが……！！」
ーーーーーーーーー
僕達は急いで鏡の空間を移動していた。元来た鏡があった場所まではそこそこ距離があるので、すぐに帰れないのが歯痒い。
「大丈夫なの？グリム……オーバーブロッドって」
「分かりません、僕らが出た後急に暴走し始めたらしくて……情報も何もまだよく分かってないんだそうで……！」
「とにかく、今は急ぐしか無いみたいね」
「……ああ、そういえばリヒルデさん」
急いでいる今なら訊けるかもしれない、と少し邪な考えで切り出す。
「さっき言ってた『母さんが抱きしめてるから』ってどういう意味ですか……？」
「嘘、私そんな事言ってた？」
「言ってましたよ。どういうことなんですか？『母さん』って」
心做しか責めるような強い語調になってしまったことにすぐ後悔してしまう。……彼女にとって僕は子供同然なのだろうか。泣き荒ぶ僕の姿が、母を呼ぶ幼子に見えたのだろうか。どちらにしろ端
「……もし貴方のような子供が居たらって、そう思っただけよ。でも子供扱いなんて嫌よね。ごめんなさい」
「子供たって、僕とリヒルデさんは２つしか離れてないでしょう？……そういう事じゃないんです、どうして……」
単純に、子供扱いされたことを気にしたんじゃない。僕もそんなに子供じゃない。……貴女にそう思われたくなかったんだ。
探していた鏡の在処に辿り着いた。先刻に僕らが闇の鏡から入ってきたのと同じ場所だ。
「あ、今は後でいい？急ぐわよ」
僕の質問を躱して、彼女はさっさと鏡の向こうへ行ってしまった。仕方ないので僕も後に続いた。
「学園長、戻ったわよ」
「ああー！やっと帰ってきてくれたんですね！私一人でどうしようかと……！」
そういえば今日はスプリングホリデー初日。皆実家に帰省するから、学園内には殆ど生徒が居ない。
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
