episode-21 ページ23
「……そうか。……災いとは、運命とは、人間の力ではどうしようも無いものだ、魔法の使えない人間なら尚更……。しかしユウ、お前は善き心を持っている。お前のその心は、今は願うことしか出来ないのかもしれない、が、それがいずれ世界への祝福となり、災いを払う力となるかもしれない、僕はそう思う」
「そうか……ありがとう。ツノ太郎は優しい言葉をくれるね。僕、頑張るよ。魔法以外で僕にできること、必ず見つけて見せる」
そのことが、きっと僕がこの世界に来た"意味"へと導いてくれるのだろう。
「とても邪悪な力を感じる。その力はお前の心すらも害してしまうだろう。お前も注意するといい。特に、『不自然な変化』には……」
その言葉に、続々と背筋が泡立つのを感じた。ここ最近ずっと肌で感じていた微々たる恐怖を自覚してしまった瞬間だったからだ。……『変化』と言われて思い当たる事は一つしかない。
リヒルデさん、貴女は一体何者なんですか……？
ーーー
僕の不安が的中したのか、そんなことがあった日の数日後に、僕とリヒルデさんは学園長に鏡の間へと呼び出された。ちょうど終業式が終わり、スプリングホリデーが始まる日だった。
「ユウ君！よく来てくれました！朗報ですよ、貴方のもと居た世界の手掛かりを掴めそうなんです！」
「えっ、本当ですか？」
「ええ！こちらから監督生君の世界の時空内の位置を特定できそうなのです！いやあ、リヒルデさんは本当によくやってくれましたよ！」
「え……」
以外な名前に、一瞬思考を止めてしまう。ツノ太郎との会話があった後、僕はリヒルデさんに対してちょっとよそよそしく接してしまっていた。何から何まで得体の知れない彼女が少し恐ろしく思えてきたからだ。
今この時もその恐怖は変わらない。何故、この世界のどの本にも、どの記録にも載っていない僕のいた世界を、彼女はすぐに見つけてしまえたのだろうか。
最早それは恐怖より畏怖と言った方が近かった。いつも同世代の対等な相手として接していながら、ふと、彼女は本当はとんでもない存在なんじゃないかと恐ろしくなるのだ。
なのに、彼女への憧れや親しみを捨てることは未だに出来ないでいた。恐怖と恋心で、僕の心はぐちゃぐちゃだった。
「位置を特定しただけじゃないわ。本格的に帰れる訳では無いけど、実際に見に行けるレベルまで進んでる」
「リヒルデさん……？！どうしてここに……？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
