episode-14 ページ16
「じゃあ改めて初めまして。私はリヒルデ・エーレンベルク
。学園長の知り合いで、今は訳あってオンボロ寮でお世話になっているわ。君達はユウのお友達？」
急にオレ達に方向転換して話しかけてきた美女……もといリヒルデさんに、オレもデュースも緊張のあまりすぐには反応できなかった。
「っ……エース・トラッポラ。ハーツラビュルの1年です」
「でゅ、デュース・スペード、同じくハーツラビュルの1年ッス！」
二人ともタジタジになりながら自己紹介をした。デュースなんかは緊張しすぎてちょっと不良が出てきてしまっている。相変わらず分かりやすい奴、と吹き出しそうになったが、オレも他人を笑っていられる場合ではないと思う。
「まあ、元気な友達ね、ユウ。……そうだ、二人とも折角だし、晩御飯食べて行かない？」
「え？いいんっスか？」
「そんなにあった？リヒルデさん」
「いつもグリムが沢山おかわりするから余分に作ってるのよ。あと二人分ならギリギリあると思うわ。……その代わり今日はグリムのおかわりはお預けです！」
「なっ！なんでなんだゾ？！折角三食腹一杯食えるようになったのにー！」
ユウに抱えられていたグリムが文句を飛ばす。リヒルデを置いておくに当たって学園から支給される生活費も増えたのだろう。
「びしょ濡れのまま談話室の床を歩いた罰よ」
「けち〜！」
グリムとリヒルデが言い合っているそばで、ユウがはっとしてリヒルデに駆け寄る。
「それより早く服！リヒルデさん！服着てください！」
あっ、と可愛い声を出して、頬を赤らめて奥の方に駆け込んで行ってしまった。
ーーー
「なあ、デュース」
オンボロ寮で夕飯をご馳走になった帰り道、オレ達は寮の門限に間に合うように早歩きで帰っていた。
「何だよ？今急いでるのに」
「ユウってリヒルデさんのこと好きなのかな？」
「はあ？」
「いや、ユウの奴、あからさまに頬っぺた赤くしちゃってさ……ま、あんな美人とひとつ屋根の下とかだったら、分からなくもないけどな」
「何が言いたいんだ？エース」
「いやあ〜、なんかねぇ、良いなーって思ったの、リヒルデさん」
「つまり、好きになったのか？」
「そんなハッキリ言わなくてもさぁ……まあ、そうなんだけど。なんか美人だしお淑やかそうだし……」
「まあ確かに綺麗だけど……なんかシェーンハイト先輩に似てないか？」
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作者名：虹雪 | 作成日時：2024年2月8日 2時
