【ヒロアカ】受動喫煙【男主】 (ページ17)

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17本目. ページ17

時が止まった

正確には、感覚がしただけだが、それ程に驚いた
鼻で笑ってやろうと思っても、駄目だった
だって

｢何…言ってんの…？｣

あまりにも確信を付いた言葉だったから

｢俺の事は愛さなくても良いです、でも、あなたの事は愛したい｣

あまりにもコイツの目が真剣だったから

[愛]なんてどんなものかも分からない子供が吐く[愛]という言葉にでさえ、縋ろうとしてしまう自分が嫌になり、頑張って表情を作り頬を上げて

｢俺は間に合ってるから、お前からの愛なんて要らない。帰れ｣

そんな事、一つも思ってないよ

間に合うも何も今まで愛を貰った事なんて一度も無い
欲しいと思ったお前からの愛なんて

欲しくて欲しくて堪らない

｢嘘だ｣
｢何でそう思う？お前に俺の何が分かる？｣
｢あなたは

いつも冷たい目をしてた｣

涙を絶えず流し、右手で俺の頬へと手を伸ばす1年の手を振り払おうと思っても
振り払えなかった

｢いつもいつも、寂しいって顔で笑ってた
あなたの姿を追い掛けて…本当は、あなたが煙草を吸っている事も知ってた｣

｢…｣

1年の手から伝わる、感じたことの無い暖かみが、心地好くて

｢最初はただの興味でしか無かった、でも…あなたがあの場所に煙草を吸いに行く度にあなたは言ってた
愛されたい、って｣

こちらを見つめる1年の瞳が、優し過ぎて

｢いつからか…あなたの事、愛してみたいって思う様になってた。この感情が何なのか分からないしどうしたらいいのかも分からなくて…少し、怖くなった
だからあの日、あなたにわざと近付いたんです｣

身体が、動きたくないと言ってる
このままこの視線を、暖かみをずっと感じていたいと

自分に素直になれと、そう言っては

｢…先輩、あなたのそばに居てもいいですか？｣

｢っ……｣

訳の分からない涙を流そうとして来る

言っても良いのだろうか
本物の俺を、出しても良いのだろうか

恐い

何故か震える手で1年の手首を取り、ゆっくり、握り締めてみる
久し振りに感じる、自分以外の体温

心が、震える

｢お前に…触れても、いい、か…？｣
｢…はい｣

柔らかく優しい表情でこちらを見て、手を広げる姿に、また手が震えた
脇腹の辺りに手を回し、心臓に耳を当ててみる

伝わる心音

鼻をくすぐる匂い

俺の頭を包み込んで撫でてくれる手

全てが、初めてのようだった