【ヒロアカ】受動喫煙【男主】 (ページ16)

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16本目. ページ16

知り合ったのはつい最近のはずで
顔を合わせた事なんて、無いのに

｢あ、なたの事…ずっと前から知っていました…っ｣

静かに涙を流しながら、冷えた指先で俺の小指と薬指を軽く握りしめる
まるで赤ん坊の様な仕草に戸惑い、後頭部に添えていた手を机へと置く

人から好きだと告げられる事は今まで何度もあった
それこそ数え切れない程に
だけど

男から言われた事は一度も無い
それほど、同性の恋愛は異質で、リスキーな事だから

人に想いを伝えるという行動すら恐ろしい事なのに、今コイツは

どれだけ勇気を振り絞ったのだろう

｢見てるだけで良かった、仲良くなりたいとか話したいとか…そんな事、考えてなかった。
だから…あの時、本当は嬉しかったんです…あなたに話しかけてもらえて｣

いつ間にか泣き止んだコイツは、話す内容とリンクするように、本当に嬉しそうに笑った

その姿が、異常に美しく見える

｢じゃあキスも喜んでた訳だ｣
｢それは！…ひ、否定はしませんけどビックリして｣
｢…｣

虐めようと吐いた言葉も、全て純粋さで掻き消されてしまう
本当にこの子は

｢俺とは離れた方がいい｣
｢え？｣

｢俺のそばに居ると不幸になるよ｣

なんていい子なんだ

きっとこの子は、俺のそばに居たいとこの後言うのだろう
駄目だよ、そんな事、絶対に駄目だ

今俺はこの子を欲しいと思ってしまったから

｢今すぐ俺から離れて忘れた方が良い｣

俺が欲しいと思った人はみんな離れていく
俺の横に居てくれた人は今までで1人しか居なくて
その人は、俺をこの世に産み落とした女は

きっと今幸せだろうから

俺が欲しいと思った人は、俺から離れれば離れる程幸せになれる

だから

｢早く、帰りな｣

｢…｣

俺から離れて幸せになれる様に

今のうちに離れてくれ

｢嫌です｣

｢…先輩の言う事は聞くもんだよ1年生｣

また泣き出した瞳は、悲しそうに揺れている
震える手で俺の制服の裾を掴み、離そうとしない

お前には、他に沢山人が居るだろう…？

｢離せ｣
｢嫌です｣

｢離せ！！！｣

部屋中に響いた自分の声
こんなにも声を荒らげた事は初めてだった

眉を下げ、下を向いた1年の姿を見てこのまま帰ってくれ、そう強く思った
想いを伝えたのに怒鳴られて離れろだなんて、本当に申し訳ないね

ごめんな

｢俺はあなたを愛したいんです｣