【ヒロアカ】受動喫煙【男主】 (ページ12)

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12本目. ページ12

舞台に立っているアイツを見た

アイツの所属する1-Aは舞台の上で、無駄に完成度の高い衣装を身に纏いながら必死に演技をしている

まぁその演技力がどうかは別として、嫌に完成度の高い備品のお陰で、俺の周りに座る奴らの目は完全に好奇に満ちていた

心臓を時間を掛けて潰される様に苦しい息

アイツが台詞を言う度に、頬を緩ませて微笑む度に、舞台を駆け抜ける度に

胸が、痛む

時刻は19時過ぎ
他の奴らをお得意の笑顔で見送り、開いたノートパソコンの前で頭を抱える

しなくてはならない仕事も、決めなければならない考え事も、山ほどあるのに
頭が全く働かない

自分がどうして悩んでいるのかも、自分が何故こんな所で固まっているのかも、どうして…どうして

｢…はぁ｣

あの1年の事を考えているのかも、分からない

いくら時間を掛けて悩んで考えたって、相手の気持ちが変わらなきゃ、無意味
人は、分からない

いくら欲しくても、きっとこのまま変わらない

俺はそんな人間だから

きっとこのまま何事も無く生きて、何不自由なくテンプレ通りの人生を送る

でもその人生に

きっと幸せは存在しない

悲しい事だけれど、仕方が無いんだと思う

俺は、完璧過ぎる

外見も頭の出来も回転の速さも、全部あの人譲りだから

だけど俺はあの人みたいに不器用じゃない

抜けた所なんて、あっても周りに見せたくなんて無いから、誰にも心を開こうとしないから

だから幸せに見放される

｢…諦めろ、俺｣

期待するだけ、無駄だから

アイツは…あの人は、俺と違う人間だから
俺とは違って幸せになれる人間だから

巻き込んじゃ駄目だ

俺が諦めればアイツは幸せになれる
なら

こちらから身を引いてやる

迷惑かけて悪かったな、轟