五十三話 ページ8
「自分でよくここまでちぎれるよ」
医務室の棚から消毒薬を取り出しながら、私はエレンの手を見て言った。
エレンの歯の形にえぐれた肉が痛々しい。
「いてぇ」
「……でしょうね」
巨人化がうまく行かないことに気落ちした様子のエレンに、私は腰かけるように促した。
「そこ座ってて。すぐ消毒して包帯巻くね」
「……さんきゅ」
しゅん、と音が聞こえそうな位落ちこんでいるエレンがかわいそうでならない。
今となっては、エレンは人類の希望なのだ。
絶対に成功しようと気負っているのだろう。
私も何かしてあげられたらいいんだけどなあ。
そう思いながらエレンの向かいの椅子に座り、オキシドールを染み込ませた脱脂綿で傷口を軽く抑える。
「エレン、あれやってあげようか」
「アレ？」
私の提案にぴょこん、とエレンが顔を上げる。
消毒を済ませた私は脱脂綿を包帯に持ち替えて笑った。
「痛いの痛いのとんでけ〜って。懐かしいね」
「……じゃあ、頼むわ」
少し迷ったような仕草の後、エレンがはにかみながら手を差し出す。
本当に頼まれるとは思っていなかったが、私はエレンを少しでも元気づけようと意気込んで手を握った。
「よーし、痛いの痛いの飛んでけ〜…って」
「うぉお！」
突然のことにエレンも私も目を丸くする。
なんと、エレンの手が蒸気を立てて自己修復を始めたのだ。
みるみるうちに肉が再生されていく光景に息をするのも忘れそうになる。
「す、すげえA！」
「おい、何やってるお前ら」
驚いて二人で騒いでいると、気づいたら入口にリヴァイさんが立っていた。
「終わってんならさっさと戻れ」
「す、すみません。すぐ包帯巻きます」
もう一度見たエレンの傷口はもうほとんどふさがっていたが、私は念の為に包帯を巻いておくことにした。
少し焦りながらエレンの手を白い包帯で包んでいく。
「ごめんね、はいおしまい」
ありがとう、といってエレンはリヴァイさんの方へ駆けていく。
ずっと一緒にいた幼馴染なのに、エレンはなんだかすごく遠い存在になってしまった。
その後姿を見ているのが、どうしてもさみしかった。
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ミカサ(プロフ) - ぐふぉっ(リヴァイの尊さにやられました) (2021年3月18日 15時) (
レス) id: 2cebe15e55 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 麗紅花さん» お返事遅くなってしまいすみません。楽しんでいただけたならよかったです！そろそろ続きも書こうと思っていますので良ければぜひお読みください〜 (2021年2月28日 18時) (レス) id: af5768fbd2 (このIDを非表示/違反報告)
麗紅花(プロフ) - 作品を最初から最後まで読ませてもらいました！とても可愛くて純粋な恋愛で萌えました。リヴァイの性格も口調も上手く捉えていてスゴッ！！！と思いました。続きできたら是非とも読みに来ます！小説を頑張ってください！応援しています。 (2021年1月1日 15時) (レス) id: fa2fa0f152 (このIDを非表示/違反報告)
はるこん(プロフ) - 睡蓮さん» 最後の方は結構駆け足でしたよね笑 来年度に時間ができたら書きたそうかなと思っていますー読んでくださってありがとうございます！ (2020年5月3日 14時) (レス) id: 99f376c927 (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮(プロフ) - こんにちは！作品一気に読ませていただきました！すごく面白かったです！リヴァイ兵長はきっとキャラや口調的に難しいと思うんですが、それを感じさせないぐらいすごく読みやすかったです！もっと先の物語も読みたいなって欲が出てしまうぐらいでした！笑 (2020年4月30日 1時) (レス) id: 56d089aaee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるこん | 作成日時：2020年3月19日 15時
