正しい犬の手なずけ方【A3!】 (ページ2)

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第1話ページ2

「ねぇ、お兄ちゃん、ちゃんと聞いてるの？」

「あぁ、もちろん聞いてるぞ」

「……じゃあ、今まで私、なんの話してたか言える？」

「…………今日の夕飯の話だろ？」

相変わらず私の話を聞いてくれない兄に今日何度目か分からないため息をつく

「ねぇ、久しぶりに家に帰ってきてくつろぎたいのは分かるけどさ、少しは私の話聞いてくれてもよくない？」

そう…私の兄はMANKAIカンパニーという劇団に所属していて家に帰ってくるのはもう4ヶ月ぶりなのだ。

「ははは、Aごめんごめん、ちゃんと聞いてやるからもう一度言ってみてくれ」

「いや、まぁ、大した話じゃないからいいんだけどさ…」
私は少し頬を膨らませてテレビに向き直る。

「そうか？ならいいんだが……それより、A来週の日曜日って暇か？」

「急に何よ？日曜日は……多分暇だと思うけど…」
質問の意図を理解できないまま曖昧な返事をすると兄は途端に一年に一度見せるかどうかの笑顔を見せながら1枚のチケットを渡してきた。

「お兄ちゃん？これなに？」

「これ、俺が所属してる劇団の公演のチケットなんだけど、Aって見に来たことなかっただろ？良かったら見に来てくれ」

「ありがとう、嬉しい！絶対見に行くね！」

「あぁ、それより、飯できたから早く食っちゃえ」

「はーーい！」

そして日曜日、公演に行く前に公園でお散歩(ダジャレではない)をしていたらまた嵐少年がいた。

「あ、あの時の人っすね！お久しぶりっす！覚えてるっすか？」

「はい、覚えてますよ」
あんな嵐のような衝撃的な人を忘れるはずがない
「光栄っす！あ、やばいっす！本番に遅れる！俺っちこのあとちょっと用事あるんで失礼するっすね！二回も連続ですみませんっす！じゃあ！」

「あっ……」

声をかけようとした時には嵐少年の背中は驚くほど小さくなっていた。

「MANKAIシアター…MANKAIシアター……あった、ここね！それにしても、すごい人ね…演目は……異邦人？それよりも…この子…あの嵐少年に似てるな…でも女の子か…ご兄妹かなにかなのかな？」

『まもなく開演いたします。席についてお待ちください。』

アナウンスが聞こえ、考える暇もなく急ぎ足で席についた。