＃０２ ページ3
コビー大佐に仕事を言い渡され、私は稽古場へと足を進めた。
『ここか…』
日本家屋風に作られた稽古場へと入ると、沢山の視線を浴びる。
海兵達は口々に私の名前を囁いた。
指導官「A少佐！！執務ご苦労様です！！稽古場へはどういったご用件で？」
『コビー大佐の命で、こちらに参りました。私はただの様子見なので、どうぞ続けて下さい』
私がそう言うと、海兵達は一斉に敬礼をし、再び訓練を始めた。私は隅でチェック表に記入する。
両方の耳からは竹刀のぶつかり合う音や、足を地面に下ろす音が盛んに聞こえる。
さほど気になるものでもないため、ペンを走らせた。
海兵「少佐ああああ！！！！」
数分経ったその時、突然1人の海兵に叫ばれた。何事かと思いペンを止めてそっちを見ると…。
竹刀が私に向かって飛んできていた。訓練中、相手方に竹刀を弾き飛ばされたのだろう。
『っ！』
竹刀を避けるのは簡単だ。だが、海兵が叫んだときには、竹刀は避けれる範囲には無かった。
瞳が危機を感じて黄色に変化する。
バシンッ！！！
稽古場に竹刀と何かがぶつかり合う音が鳴り響く。その瞬間、当たりは静まり返った。
竹刀が私の額にクリーンヒットしたのだ。地味に痛くて反射的に座り込んでしまった。
なんと情けない。
海兵「A少佐！！た、大変申し訳ありませんでしたあああああ！！！！！！」
竹刀の持ち主の海兵が急いで駆け寄り、敬礼で謝ってくれた。私は顔を上げ大丈夫だと悟す。
が、その途端全員の顔が顔面蒼白に変わった。
指導官「しょ、少佐…ひ、額から…血が…」
『え？…あ』
ヌルッとしたものが頬を伝う。手で触れて見てみると、それは赤い血だった。
そして今度は、私の瞳が赤く変化する。
『あぁ…だ、大丈夫大丈夫！それよりも、訓練を続けて下さい！』
笑って誤魔化すと、戻る様に促した。一応上官からの命なので、海兵達はおずおずと戻って行った。
私は一息ついて、稽古場を出て行った。
『…さて、どうしたものか…』
とりあえず手持ちのハンカチで血を拭うと、近くの井戸で傷を洗った。
『あぁ…止まんないなぁ…』
仕方なく医務室に行くと、ガーゼを貼ってくれた。
医務官「A少佐、竹刀なんて、避けれたでしょうに」
『あはは…避けれる範囲でも無かったので…少佐失格ですね』
医務官「…」
空気が悪くなったため、私はすぐに医務室を出て行った。
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作者名：栗山 | 作成日時：2022年9月9日 23時
