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「あれ?Aちゃんじゃん!え、なんでいんの?!」
ドア近くに立っていたのはおばけの帽子をかぶった渡辺さんで。
その突然の大声に、何事かと作業スペースにいた皆がこちらを見て、また私は目を丸くしてしまった。
全員が何らかの仮装をしていて、まさにこのオフィスでさえもハロウィンという雰囲気がピッタリだ。
そんな中、私服の私1人がなんだかものすごく場違いな気がしてして…。
『ちょっと資料を見にきただけなので、すぐに帰りますから…』
そそくさと資料スペースに撤退しようと軽く会釈をしつつ身をかがめた時、不意に目の前に誰かが立っていた。
「資料って、見るだけ?その後、時間無いかな?良かったらAちゃんも飲まない?」
優しい気遣いの言葉とは裏腹に、悪魔のツノのヘアピンと矢印のような尻尾をつけた山本さんがこちらを見ている。
「まぁったく、Aはホントに真面目だな。それきっと、明日でも間に合うやつなんだろ?いいじゃん、もうこのオフィスは今からハロウィンパーリーナイトなわけ!だからもう今からAも参加決定な!」
骸骨のお面を付けていて面食らったけれど、それをさっと取って髪をかきあげたのはニコニコと笑う伊沢さんで。
「おっし、Aちゃん1名様追加でーっす!」
後ろからポン!と両肩に手を置かれ、驚いて振り返ると立襟マントと付け牙でドラキュラになった須貝さんが立っていた。
3方向から行く手を阻まれてしまって、しどろもどろしていると。
「まぁまぁ御三方、Aさん怖がってるよ。ごめんね、強引で」
助け舟を出してくれたのは、いつかの動画で見た黒魔道士のようなフード付きマントの河村さん。
「勝手に盛り上がっちゃってるけど、俺らも無理矢理だからね、コレ。着ないと飲ません!ってゆうどっかのCEOのお達しで」
持っているステッキを少し苛立たしげに揺らしながら魔女帽子を被っているのは鶴崎さんで。
「そうですよ!見てくださいよ!僕なんか選ぶ余地なくいきなりコレ被らされたんですから!」
抗議の声を上げながら、ふわふわのかぼちゃ帽子を揺すっているのは山上君。
「まぁこの男だらけのむさ苦しい仮装会場にAさんがいるだけで癒しになりますから」
包帯とフェイスタトゥーシールで結構リアルなミイラになっているノブ君にそう言われて。
その隣でうんうんと頷く猫耳カチューシャと尻尾を生やした乾君を見て思わず顔がほころんでしまった。
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作者名:SEN | 作成日時:2021年10月16日 0時