follow my hand (ページ23)

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「そっかぁ。そんな日ってなんか、引きずって気落ちしちゃうよね。わかるなぁ」

今持ってきたであろうパソコンを机に置きつつ、俺の話を聞いて相槌を打ってくれる。

こうやってAさんと話せるだけでも、今朝からの失態が浮かばれるようで、癒されて行くのがわかる。

(俺、ほんとAさんのこと好きなんだなぁ)

なんて。

単純明快に改めてそう感じてしまえば、その声も表情も仕草も、全て自分にだけ向けられるのなら、どんなにいいだろうかという欲まで出てしまう。

『あ、そうだ！ノブ君、ちょっと手見せてくれない？』

突然何かを思いついたように、Aさんがソファ側の机に近づいてきた。

「手、ですか？あ、どうぞ」

言われるままに、聞き手の右手を差し出すと、急にその両手に包まれてしまったことに動揺して心臓が跳ねた。

『趣味で手相占いやってる友達がいるんだけど、この間会った時にちょっと見方教えてもらって。覚えたら面白くてオフィスのみんな見せてもらってるんだ。手相ってその時々で変わって行くんだけど、右手は今の状態が見られるから、なんかいい事がわかるかもよ？』

落ち込んでいる俺に対して彼女なりの励ましの行動なのだと瞬時に理解したけれど。

夢占いのことも話していないのに、占いというワードが出た事にもまた焦りつつ、そうなんですね、と一言返すのが精一杯だった。

Aさんの温かく柔らかな両手の中に、自分の右手がある。

そんな非現実的なことが目の前で起こったのにも関わらず、何故か既視感がある気がして首を捻った。

恥ずかしさから泳がせていた目を、ちゃんとその手元に移した瞬間。

思わず、息を飲んだ。

(これは…)

(まさか…)

この状況は間違いなく、今朝夢に見たばかりのあの情景で。

(と、いうことは…)

ぼんやりとしか見えなかった人影は、目の前にいるAさんで間違いない事になって。

『これが生命線で、これが運命線。これが感情線で、これが頭脳線。あ、ノブ君の頭脳戦、途中で切れてるね。確かこれ運動能力高いってゆうスポーツ線じゃなかったかな？すごいね、当ってる』

俺の手のひらを見ながら、説明する線に沿って丁寧に指先で示してくれているのだが、俺の心中は全くそれどころではなくて…。

(占いの…内容は…)

全く冷静ではない頭で答えにたどり着こうとしたその時。

Aさんに突然手を引かれて、まるで導かれるように。

俺はあの夢通りに立ち上がった。

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