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｢えっと…｣
｢今回の12時間クイズは植木が優勝して、大学時代ずっと一緒にクイズしてきたから、僕は鼻が高いんだ。けど、それと同時に……“世代交代”のときか、って思った。｣
山本さんのその一言に、俺の胸がギュッと締め付けられた。
この人が、そんな風に思ってたなんて、全然知らなかった。
｢僕、クイズ弱くなったよね。｣
山本さんはそう言って、悲しそうな目をしたまま俺に笑いかける。
｢何言ってるんですか！！！｣
気づけば俺は、声を荒らげていた。
そして、目の前の好きな人を力いっぱい抱きしめていた。
“酔い醒ましに外に出た”っていうのは、やっぱり嘘だった。
山本さんは、12時間クイズでの自分のプレイングを引きずってたんだ。
そんなに悪かったわけじゃない。
けど、“第1回12時間クイズ優勝者”という肩書きが、プレッシャーをかけていたのかな。
｢山本さんは……俺の中でずっと1番クイズの強い憧れの先輩です。これまでいろんな強いクイズ屋と出会って来ましたが、QuizKnockに入ってからも、大学時代からずっと俺の中の最強クイズプレーヤーは山本さんです。｣
“弱くなった”、なんて誰が思うだろうか。
｢直井……｣
｢植木だって、山本さんの背中見て強くなったんですから。今でも山本さんは十分強いし、クイズしてる姿は誰よりもカッコイイですよ。｣
俺は山本さんを離し、真っ直ぐに目を見つめた。
｢俺……山本さんのクイズしてる姿、大好きなんです。誰よりも楽しんでる、そんな山本さんが。｣
俺がそう言うと、山本さんは恥ずかしそうに俺から目を逸らした。
｢ありがとう。……そう言えば、大学時代もこうして直井に助けられたことあったね。｣
山本さんが俺に笑いかける。
そう、貴方には、ずっと笑顔でいて欲しい。
｢……そうですね。｣
これからも、俺が1番そばにいて、支えますよ。
この言葉を本人に伝えられる日は、果たしてくるのだろうか。
｢はぁー！目が覚めた。よし、直井、みんなの所戻るぞ！｣
そう言って笑顔で店の中に入っていく山本さん。
俺も後に続いて行こうとしたその時、スマホの通知が鳴った。
｢……え、ノブからLINE？｣
開いてみると、そこには衝撃の一文。
『告白成功したん？おめでとう！』
｢いや告白なんかしてねぇわ！！！！｣
ノブの軽率な言動に憤慨しながら、俺は飲みの席へと戻って行った。
終.
終わり
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作者名：榎宮(kamiya) | 作成日時：2022年2月14日 18時
