昨日の友は今日も友。[sgi] ページ17
.
「おはようございます」
「あ、Aちゃんおはよう」
研究室に入る時は、必ず挨拶をしている。
誰かがいてもいなくても。
「須貝さんお疲れ様です」
「お疲れ様て、まだ9時やからなんもしとらん(笑)」
「確かに」
同じ研究室の須貝さんは、ひとつ上。
気軽に話してって言って貰えたけど、気軽になんて話せない。
困ったことは須貝さんに聞けばほとんど解決する。
説明は分かりやすい。
話していてとても楽しい。
友人に1人でもいると、安心するタイプの人間だと思う。
そんな彼になにか不満があるとするならば、何故か私を子供扱いすること。
「そうだ、Aちゃんレモン好きやったよな」
「はい!」
「これあげる」
「レモンのグミ?」
「おん、朝コンビニ寄った時に好きそうやなって」
「ありがとうございます。…でも毎回お菓子いただくのは、申し訳ないです」
今日はグミ。
昨日は飴。
一昨日は…。
ことある事にお菓子をくれる。
「確かに、お菓子をくれる人に悪い人はいないですけど」
「そんなやと、Aちゃん悪い人について行ってしまいそやな」
「悪い人は、お菓子の存在を仄めかすだけで、現物支給はしないんですよ?」
「ははッ、おもしろいこというねぇ」
椅子にかけたままにしていた白衣を着ながら、ホワイトボードで今日の予定を確認する。
もちろん、グミはポケットの中。
「でも実際そう思いませんか?悪い人でお菓子ちゃんと持ってる人見たことない」
「せやなぁ」
おもむろに立ち上がった須貝さんは、振り返った私のちょうど後ろにいた。
トンッとホワイトボードに手をついて、気づけばその距離わずか数センチ。
「Aちゃんが、良い人やと思っとる人に餌付けされとったとしたら?」
「餌付け!?」
「それでもその人は“良い人”って思ってもらえるんやろか」
カサっとポケットの中のグミの袋が鳴った。
「ッそれは!」
「はぁ〜お兄さん心配やわ。いつか悪い人について行くんとちゃうかってね」
ワシワシと頭を撫でられ、私の絞り出した声が届く前に、“コーヒー買ってくるわ”と研究室を出ていってしまった。
昨日の友は今日の友。
じゃあ、明日からは…?
ヘナヘナとその場に座り込んでしまった私を彼は知らない。
287人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りりぃ(プロフ) - シラユキ。さん» コメントありがとうございます!全て面白いなんて言っていただけて、嬉しい限りです⋆*リクエスト了解致しました。シラユキさんもご自愛ください𓂃◌𓈒𓐍 (9月24日 9時) (レス) id: 25bf53f7a7 (このIDを非表示/違反報告)
りりぃ(プロフ) - ばたこさん» コメントありがとうございます!リクエスト了解致しました⋆*ご期待に添えるよう頑張ります! (9月24日 9時) (レス) id: 25bf53f7a7 (このIDを非表示/違反報告)
シラユキ。 - お話全てが面白い短編集を見つけてしまった…リクエストいいですか…mnちゃんのお話を頼みたいです…!できればでいいのでお体に気を付けて頑張ってください! (9月18日 15時) (レス) @page36 id: fd9c934f53 (このIDを非表示/違反報告)
ばたこ(プロフ) - いつも応援してます!リクエストなのですが、東言さんのお話みたいです、!更新ゆっくりで大丈夫です!! (9月18日 11時) (レス) id: 2432bd82c3 (このIDを非表示/違反報告)
りりぃ(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます!ものすごく嬉しいお言葉ばかりでニコニコが止まりませんでした*°今は少し忙しくまばらな更新になってしまいますが、是非お待ちいただけると幸いです!ありがとうございます! (2023年3月31日 1時) (レス) id: 25bf53f7a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りりぃ | 作成日時:2022年9月24日 16時