フルーツは真っ赤なアップルが1番。【短編】

良薬は心臓に悪し。[kwmr] ページ2

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最近何をやっても正解が分からない。
基本的に私はマイナスなことがあっても、一晩寝れば元通りの人間なので、何かを引きずるということ自体、ほとんどない。

でも、このよく分からないマイナスにも満たないモヤモヤは、私の中から一晩では出ていってくれなくて、蓄積されていく一方だった。



「あれ？Aさん珍しいね、この時間まで残ってるの」

「お疲れ様です。山本さんこそ、珍しいですね？この時間にお会いするの」



よく分からないモヤモヤと対峙しながらの仕事は捗る訳もなく、いつもなら定時に切り上げる仕事量なのに、気づいたら一周半時計の針は回っていた。



「今までサブチャンの撮影してて」

「なるほどね！投稿されるの楽しみにしてる！」

「河村さんもう少しで来ると思うけど…？」

「いや、もう帰ります。残ってる予定じゃなかったから(笑)」

「じゃあ一緒に帰ればいいんじゃない？」

「んー、私の精神衛生状態的に、河村に二次感染被害をもたらす可能性があるから、会わないで帰る」

「そう？」

「うん、ありがとう！」



山本さんと会話を交わしながら、手早く帰る準備をした。



「じゃあ、また明日。お先に失礼します」



ぺこりと一礼をして、ドアノブに手をかけたつもりだったが、外から入ってきた人によってそれは阻まれた。

それに伴って、勢いよく私の手は空を切り、前につんのめる形で、見える世界がスローモーションに流れて行った。



「ぅわ………」

「わ、随分大胆」

「河村…」



タッチの差で、私よりも先にドアを開けたのは紛れもなく河村で。
転ぶ前に、受け止めてくれたのもまた河村で。



「なに？彼氏置いて帰るつもり？」

「いや、そういう訳じゃ」

「じゃあ、ちょっと待ってて」



涼しい顔した河村の背中を目で追うと、山本さんと目が合った。
意味ありげに微笑まれたから、少しだけ睨んだ。
山本さんは河村の使いだったわけね。

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