hand cuff #1 kwmr ページ13
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お風呂上りにアイスを口に咥えながら気付いた、“明日って空いてる?”ってLINE。
何だか凄く久し振りに彼からの通知を見たな、と思ってちょっと遡ったら最後に文章で言葉を交わしたのは数週間前だった。
まあ毎日顔を合わせる訳だから、不便じゃないし不服にも思ってないけど。
…ちょっとだけ、ちょっとだけ珍しくて心が浮ついた。
『!…わ、はや。』
“時間によるけど空いてるよ”“どうしたの?”と返すと、すぐに既読がついた。私の返事を画面を開きっぱなしにして待っていたのかな?と思うとまた擽ったい気持ちになる。
付き合いたての頃を思い出すというか?そんな感じ。
何となく真似して数分間、私もトーク画面を開いたまま返事を待ってみたけど携帯はうんともすんとも言わなくて。
アイスはとっくに食べ切って、手持ち無沙汰になった。
寝るのも遅くなるし…と諦めてドライヤーに手を伸ばした時、ブブと携帯が震える。
――着信は、拓哉くんからだった。
『あ、もしもし〜』
「“Aさん?”」
『うん、どうしたの?LINE待ってたのに!』
「“あー…。”」
歯切れの悪い言葉に首を傾げる。
何も用事がなくても電話を掛けてくるような、甘えん坊な…というか甘え上手なタイプじゃない気がして。何かあったのかな、と不安に思った。
『…何かあった?』
「“いや、”」
そう彼が否定すると後ろからガヤガヤと音が聞こえる。あれ、この時間に1人じゃないってことは飲んでるのかな?
そんな疑問が頭を過った時、電話越しにガチャリと音がして彼が騒ぎ倒してる部屋から出たのが分かった。
『飲んでる?楽しそうだね』
「“酔っ払いが煩くて堪らないよ”」
『でも楽しいんでしょ?』
「“…。”」
『素直じゃないなあ(笑)』
黙り込んだ彼が一呼吸おいて“まあね”と言った。…本当、素直じゃないんだから。
「“明日のことだけどさ”」
『うん』
「“飯食いに行こう”」
あまりに彼らしくない言葉に思わず“え?”と聞き返してしまう。
予定を決めて動くことも出来るけど、普段は流れというか…その日の気持ちで動くタイプだし。前もってデートの約束なんて久し振りにした気がする。
“もう一回言って?”と口にした私の耳に、低いけど柔らかい彼の声が届く。
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作者名:遊馬 | 作成日時:2020年6月13日 21時