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#2 ページ11

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『――え?』
「……別に」


 ふいと完全にそっぽを向いた彼を見て、私の頭の上ではてながぐるぐる踊る。

 あんまり頭を撫でたり スキンシップをしない彼だからこそ、不意に出た行動にきゅんとしてしまう。


 ……照れてるだけかな?
 こっち見てくれないかな。


 そんなこと思ってたら“ああもう!”といきなり叫んで、彼がこっちを向く。


『こうへ、』
「視線が、うるさい。」
『ん、っ』


 ふわっと軽いキスが落とされて、不器用に繋いだ手を引っ張られて浜辺を足早に進む。


 うるさいと言った彼の顔は真っ赤で、今斜め後ろから見えてる耳も赤い。


 それは夕日の色じゃなくて。
 愛されてると感じるあたたかい色だった。


 …もう一回、なんて、嫌かなぁ。


 懲りずにじっと見詰めて彼の背中を追うと諦めたように肩を落とした。


「…もー」
『…航平?』


「そのまま、海の方向いて座って」


 背を向けたまま“早く”と急かされ、言われた通り潮風になびくスカートをそっと持ち上げて座る。
 彼の表情ばかり追っていた私の目に夕日が映り、水平線と重なってキラキラしてるのが見えた。


『わ、!』


 “綺麗”って言葉は彼の口に吸いこまれていった。


 夕日を背景に照れて笑う航平はとっても綺麗で…思わずそう零すと、ふはと笑った。




「Aの方が綺麗だよ?」




 なんて言葉、シャイな彼から言われるなんて思ってなくて。

 思わず固まった私の頬に優しく唇が触れた。




 夕日が沈んでいくのを2人砂浜に腰を下ろして見詰める。流れる雲がオレンジやピンクに色を変えていくように、彼の横顔も夕日で色付いていた。


 “――うれしい。しあわせだね?”


 言葉に出来たかわからないけど視線を送ると、彼は優しく笑って髪を梳かすように撫でた。


 “幸せだね”
 “これからもしあわせかな?”
 “俺らなら大丈夫でしょ”


 なんて強気な言葉が聞こえてくるような表情に思わず2人で笑ってしまった。




 ――暑い日も寒い日も、山も海も街中も家の中でも。
 こうしてずっと一緒に居れたらいいね。




 (大丈夫だよ、俺らなら。)


.
pass one's hand
[撫でる]

―― その温かな手で
大丈夫だと言って

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作者名:遊馬 | 作成日時:2020年6月13日 21時

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