大好きな【川上】

7 ページ7

『なんですか？』
「……最推し、俺なんよな？」
『？はい。そうですよ』

ムスッとした表情の彼は、私を追い越して部屋に入ってしまった。

「なるほど、そういうことね」
「お、さすが河村さん。察しが早いですな」

訳も分からず首をかしげていると、じゃあ入ろうか、と伊沢さんに連れられる。

扉を開けると＿＿今入ったばかりの川上さんに加え、福良さんとこうちゃん、須貝さんの顔が。本物……！
……あれ、山本さんはいないのか。

「山本はおらんのか。まあいいや、みなさん、紹介します。新メンバーのAちゃんでーす」
『は、初めまして！一回生の片口Aです。よろしくおねがいします』

ビジネスマナーに乗っ取って、15度のお辞儀。
一瞬の間の後、パチパチパチと拍手が聞こえた。

「女の子だ、ちょっと嬉しいな〜。福良拳です。よろしくね」
『あ、視聴者です、存じ上げてます。よろしくおねがいしますっ』

にこにこ笑顔のふくらさん。肌が白い、背が高い、足が細い、うらやましい……。
視聴者さんなんだ！と喜んでくれる。かわいいな。

「じゃあ自己紹介いらないのか。僕の本名分かる？」
『あ、渡辺航平さん』
「本物の視聴者じゃん！こうちゃんでいいよ。よろしくね、片口さん」

こちらもにこっと笑ってくれる。さすがリアクション王、コロコロ表情が変わって面白い。

「えー、自己紹介したかったなー」
『でも、ちょっと、見たいです』
「ほんと？じゃいくよ……ナイスガイの須貝です！」
『わわわ、本物だ！』

全力で拍手をすると、照れたように笑ってくれる、ナイスガイこと須貝駿貴さん。やっぱりナイスガイだ。

「伊沢がスカウトしたの？」
「いや、実はね、川上が」
「えっ、あの川上が？」
「……悪いっすか」

ふくらさんが驚く。確かに意外かも、なんて考える。

「何、もしかして彼女？川上くん」
『えええ、ちがいますちがいます』

なんとも恐れ多いことを言う須貝さん。

「でも、川上のファンなんでしょ？」
『そ、そうですけど……』
「川上さん、かっこいいもんなぁ」
『ですよねっ』

つい食い気味に同意してしまい、こうちゃんが驚く。その後ろでニヤニヤする河村さん。ニヤニヤって言葉はあれだけど、この笑い方が好きだったりする。

8→←6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す