大好きな【川上】

6 ページ6

期待に充ちた目で、2人が私を見る。＿＿ああ、無理だ。断れない。

『わ、私でよければ。やらせてください』

空になったお皿に鼻が付きそうなほど、頭を下げる。

「やった！ありがとう、Aちゃん」
「よかった。推薦した甲斐があった」
『あの、お役に立てるか分からないんですが……』

2人して、そんなことないよ、と笑ってくれる。

「じゃあさ、さっそくだけど、これからオフィスに行かない？俺ら今から撮影だし、見学に。どう？」

お店の壁掛け時計を見ると、1時半。美容院の予約時間まで、あまり時間がないことに気づいた。

『ええと、3時から用事があって……』
「あー、そっかぁ。じゃ、みんなに挨拶だけでも。ふくらさんとかいるし、話してみてよ」
『ぜ、ぜひ！』

楽しい大学生活に、なりそうだ。



『こ、ここがオフィス……わぁ……』
「なに、そんな緊張してん？」

大丈夫や、と川上さんが背中をさすってくれる。想像はしてたけど、この人天然タラシなんだろうなぁ。
オフィスは、私の下宿先のアパートからほど近いところにあった。

「今日たぶん、男しかいないけど、大丈夫？」
『あ、はい。大丈夫な人です』
「困ったら言いや？一応、友達なんやから」

なんだか、川上さんが、優しい。
……ますます惚れそうで、困るのだ。

『川上さん、私川上さん最推しなんですから、あんまり優しくすると惚れちゃいますよ』
「……へぇ」

にやりと笑う川上さん。あ、これ、遊ばれるやつだ。
そうこうしている間に部屋に着く。ただいまーと言って先に入った伊沢さんに続き、ひとつ息を落としてから、足を踏み入れる。

「伊沢、おかえり。あれ、どなた？」

おそらく撮影部屋であろう、大きな部屋からちょうど出てきたイケメンと目が合う。
う、わ、わ、河村さんだ……。

『か、かっこいい……』
「えっとねー、今日からメンバーになります、一回生のAちゃんです。今みんなに紹介するよ」
『あ、片口Aですっ』

全力でお辞儀する。
私の推しのもう1人、神、河村拓哉さん。
個性的で不思議な雰囲気のイケメンで、うん、やっぱり神である。

「片口さんね。初めまして、よろしくね」
『よっ、よろしくおねがいします！』
「なんでそんな、緊張してるのさ」
『か、河村さんが美人すぎて……』

河村さんはニヤニヤしながら、それ、嬉しくないんだよなーとぽつり。
ごめんなさいと謝っていると、後ろから川上さんに袖を引かれる。

7→←5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す