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そこから俺は時折千里の様子が気になって人間の里に通いつめていた。うらさんからはふと怪しまれたけど「なんでもない」と言い訳を考えるのが下手な俺だがなんとか自分の意志を曲げずに隠し通してこっそりと見に行った。

けれどもいつも見える姿は道場の中で刀を振るい余った時間に屋敷の部屋で書物に目を向けるという生真面目な姿だった。

決して気を抜かず常に警戒心を持ちながら気配を感じ取ろうとする、並大抵の子供が出来ないことを千里は短期間で身体に染み込ませていた。

ただ身体にはその勲章なのか痛々しい痣や包帯が巻かれた跡など子供に似合わないものがもれなく付いている状態。


…ちょっとだけ、話しかけるのはあかんかな。


さすがにこの歳で話し相手がいないのは精神的に辛いだろう。相手と話すことで相手を知り新しい何かが見つかるかもしれへんし。

けどもしうらさんにバレた時とかに簡単に姿を見せてまうとこっぴどく絞られるんよねぇ…ましてや俺妖怪だし。


「__誰です。そこにおるのは」


前方から気配をふっと現した子供の声。人間の割には霊力まであるのか俺が屋根瓦の塀の上に座っている所が見えていたらしい。

昨日までは俺が平気で座っていても見えていなかった癖にいつの間にか気配まで読み取れるようになっていたのか千里という名の少年は外の方へと出てきて俺と目線がしっかり合っていた。


「…え、見えてんの?」

「細かく神経を研ぎ澄まして集中すれば見えるようになってきますよ。というか昨日から気配が容易に読み取れましたからね」


侮れない、この子供。だから周りの人間は千里のことを一目置いていると納得がいく。

あぁでもこれ本格的にうらさんにバレれば恐ろしいことなるよなぁ。



「…まぁ山の神ですし悪事を働く気はなさそうやからええか」



千里は腰に身につけた刀の鞘から手を離してまた無表情で何を考えているかも読み取れないような瞳でこちらに目を向けた。

どうやら警戒心を解いてくれたらしい。まぁ第1段階は大丈夫そうやな。


「それで、なんで僕のことを毎回の如くつけとるんですかね?興味が湧く要素なんてどこにもないでしょう」

「うん、無いよ」

「はっきり言ってくれますね。…じゃあ無意味でしょう?僕を見て何を得ることができるんですか」

「いや、得るものは何も無いけど…お前子供らしくないなぁって」



*→←執念の獣



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夜紅茶(プロフ) - Naoさん» コメントありがとうございます!そんな前から見ていただいて嬉しいです!気長に続編を待っていただければ幸いです。 (2020年10月4日 19時) (レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - この小説が書かれだした頃から見ているのですが夜紅茶さんの言葉選びは凄く人を惹きつけるもので素晴らしいと思います!続き待ってます!楽しみです! (2020年10月4日 18時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夜紅茶 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年8月23日 16時

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