不注意【志麻】 ページ10
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「…なぁ姉ちゃんよォ。話聞いとんのかワレェ」
「はぁ」
「なんだぁその口の聞き方はぁ！一応俺客だぞぉ！？」
深夜を過ぎたコンビニのアルバイト営業。昼夜逆転生活の私に対して長話は癪に障るだけなのに何故かはよく分からないけれども昭和の古臭さが溢れ出ている酔っぱらいのおっちゃんに絡まれてしまった。
そして挙句の果てには客だという神様接待を求めてくる。確かにお客様は仏様だ。けどこの国の王様って訳でもなければ天下で一番偉い訳でもない。
心の中では「何だコイツ」と舌打ちをかまし、表面では適当に相槌を打っといて市役所で働いている公務員でもなんでもないコンビニ店員が客の愚痴を聞かされてからかれこれ３０分近く垂れ流されていた。
つーか酒とつまみ買ったんならさっさと帰って宅飲みしろよ。今は店内にお客はいないけど業務妨害でポリスメン呼ぶよ？
「お客様、もう深夜帯を回っておりますのでそろそろお帰りになってはいかがでしょうか？…ここだけの話なのですが稀に警官もここへ巡回にいらっしゃるので」
「うるせぇ！帰っても嫁が厳しい形相で待ってるだけでぇ！嫁なんか本当に…」
おっと墓穴掘ったか？柔らかく優しくそして緩い脅しまでかけたつもりなのに話の振り幅が大きく広がってしまったぞ？
にしてもコイツどんだけ恨み辛み溜まってんだよ！？そんなにバリエーション豊富なら一個くらい奥さんの前で暴露したら！？
そんな客人の相手にも苛立ちの沸点が上がるより疲労の方が溜まってきてしまいどうしようかと対応策を考えていると入口の自動扉が機械音を立てて開閉した。
「＿＿こんな時間にお悩み相談室やっとんの？」
靴音が近づいてこちらの前にピタリと止まって視線を少しだけ上げればベルフラワーの髪色にライラックの切れ長の瞳、涙ボクロが印象的な彼がいた。見慣れた格好に警官帽を深く被り直してにんまりと何かを含んだように笑っていた。
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作者名：夜紅茶 | 作成日時：2020年6月9日 16時
