ガラスの花に麗しいキスを【歌い手】 (ページ42)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:86,098 hit

・ページ42

・

「…美味しい」

「そう？良かったわ。」

あぁ、私はなんてことを忘れてしまっていたのだろうか。

笑顔、この世にとって忘れちゃダメだったもの。私は今までに笑った方が少なかったのかも。泣いてばかりで自分が困らせてしまっていた。

「そうだ。これからは忙しい時あなたの代わりに私が動くわよ？」

「しかしながら奥様、体調の方は…」

「何言ってるのよ。動かないとそれこそ体調が直ぐに崩れてしまうわ。それに食事だって久しぶりにやったかいがあったからまた作りたいと思うじゃない。」

奥様の手料理をいただけるなんて私にとってはものすごく嬉しいこと。「ね、お願い」などと言われてしまえば私は要求を飲み込むしかないのだ。

「そうだ。アップルパイを焼いたの、今持ってくるわね。」

「…奥様」

「何かしら？」

私は思い切って奥様に今の悩みを明かしてみることにした。

「＿＿＿＿お話があります。」

・