ガラスの花に麗しいキスを【歌い手】 (ページ29)

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第五章【蠱惑の囁き】ページ29

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蠱惑

人の心を乱し惑わすこと。たぶらかすこと。

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「今日はいい天気ね…」

「そうですね」

春の温かさがこのトゥルースの街の中を賑やかにさせる日

奥様は自らガーデニングを行いたいとの要望だったので庭に咲いているマーガレットやツツジなどに水やりをしていた。

「そうだ、今日はここでティータイムをしたいわ。お願いしてもいいかしら？」

「承りました」

「ありがとう」

先日、相川様から頂いた七色のバラの種を私は奥様にプレゼントしたところすごく喜んでくれたようで嬉しかった。

七色のバラは基本的に栽培が難しいのだけれども魔法で作り出すことに成功したらしく真っ先に私にお知らせしてくれた。

「そろそろアイビーもいいわね。」

「でしたら私が街まで行って調達して参ります。」

「ええ、お願いするわね。」

「そのまま街まで遊びに行ってきてもいいわよ」と勧められたので、私はお言葉に甘えることにした。

部屋に戻り机の上に乗っていた淡黄蘗のハンカチを手に取った。

本当のところ折原様に洗い終わったハンカチを返しに行きたいところなのだが中々忙しそうなので会おうにも会いに行けない。

(…って、いけない。)

時間を見るとすでにティータイムが刻一刻と迫ってきていた。私は急いで今日の紅茶とお菓子を考えた。

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