ガラスの花に麗しいキスを【歌い手】 (ページ11)

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「ここでもない…」

ヒールにもかかわらずトゥルースの街中を駆け回りながら次々と捜し求めていた。後ろからは貴族様とその腕に抱えられた少年が着いてきている。

街の広場にある噴水の場所で休んでいるが私は少々疲れていた。

「…ねぇ、アレ」

「何でしょうか？」

貴族様が指をさした方向には男の子が言っていた特徴に当てはまりそうな女性が何かを探しているような素振りを見せていた。

私は男の子を連れて「あの」と、声を掛けた。

「ママ！」

男の子の顔がぱっと太陽のように明るみのある笑顔に変わり、そのまま母親の元へと走って近づいて行った。

母親と見られる人は私の隣にいる代表貴族の衣装を見て何かに気づいたのか、綺麗にお辞儀をした。

「この度は誠にありがとうございました。」

「い、いえそんな…」

「では失礼致します。」

「おねーちゃんバイバイ！」なんて可愛く手を振るものだから、つい口の端を緩め手を振り返してしまった。

「…おい」

隣から聞こえてきた低い声に脅威を感じた。

わ、私が歩かせすぎて怒っちゃった？

私は慌てて貴族様の方へと向き直り謝罪の言葉を述べながら深く頭を下げた。

「貴族様にご無礼を働いてしまい、申し訳ありませんでした。罰ならいくらでも受けますのでどうかお許しください！」

うぅ…すごい威圧感と視線が物凄く痛い。命まで言われてしまえばそれこそ受けるしかないのだろう。

「…っく」

彼は急にに後ろを振り向きお腹を抱え込んで大きな声を出し笑い始めた。

わ、私何かした？どこかおかし過ぎるのかな？

「だって上級貴族に対して命令を下すなんて普通ないだろ？」

「そ、そんなに笑われなくても…」

「あ～、笑った笑った」なんて少し目に滲んだ涙を指で掬いながら私の方に向き直り、しゃがみ込んだ。

そしてて片方の手をとり彼の唇がそっと手の甲に柔らかく触れ、エメラルドのような瞳が上目遣いでこちらを見つめた。

「＿＿＿＿俺の婚約者になる気はあるか？」

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