玉鬘と白夜 ページ1
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滴る雨の雫が木の葉に落ちていく。木々の隙間から漏れる光芒の筋に照らされているせいか、下から見上げる木はとても神秘的で綺麗だ。
“いとをかし”なんて感覚、俺らしくもないんやけど。
「流石に敵対は免れなかったよな〜…」
隣で木の幹にもたれかかりながら深く眠るやまだぬき。俺がかけた催眠術が効果覿面なのか、半日が経過しても眠り続けてそうなくらい。
一息つくために腰を下ろしていた地面から立ち上がり、衣についた土埃を簡単に払った。
(今度こそ、アイツを死なせたりはしない。二度と同じ目に遭わせない)
木の下から出ると、冷えた雨が全身を濡らしていく。茜色の夕焼けがそろそろ宵闇に変わりそうな空を見上げ、少し後悔の念が渦巻いたが、その余念は気のせいだと思うように無理やり脳内から振り払った。
「……今日の行列は長いかもな」
¨❀*✿*❀¨
帯留めに着いた銀の鈴がチリン、またチリンと一歩動くたびに高く響き、石畳の上を歩く度にカランコロンと下駄が鳴る。
横目に見えるは赤い灯篭、延々と並んでいる景色と青い火の玉。耳元に聞こえてくるのはその場にいるはずのない奏者が奏でる雅楽の笛の音。
「真っ直ぐ、ただ前だけを向いていてください」
弱い雨が止まぬ中、隣にいるお狐様はそう仰った。後方からは雨よけをするためか、私達の方へ番傘を傾ける影一つ。宝玉にも劣らない黄金色の美しい髪の巫女が着いてきていた。
そして、聞かされたのはただ一つ。
「婚礼の義を行うので、僕の隣に来て着いてきてください」
その言葉に反抗する理由が無かった。そして私はその言葉にいつの間にか頷き、手を取った。
全て無意識の範疇で何もかも頷いて、常套句のように“はい”とだけ答えてしまう。ただ、本当に私にすらも分からない。けれど、そこに考え込むに至る程の深い疑問や不満も抱くこともなかった。
ほんの微かに違和感を感じるような気もしたけれど。
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