第19章【暗雲と霧雨】 ページ1
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暗雲
陽の光を遮る黒い雲のこと。
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「__AA様、だよね?」
目の前の特徴を言えば桃色。女性らしいチェリーブロッサムのふんわりとしたミディアムショートの髪を揺らし綺麗なルベライトの瞳が私の姿を捉えていた。周りにはたくさんの兵士、それから私の前に立って庇うように剣を構える坂田さん。
ピンクのローブを羽織った人物の右手には分厚い魔導書が一冊と左手には白の小さな杖。
「君に逮捕状が出てる。今すぐ俺に着いてきて出頭して」
微笑んだのはピンクローズの棘の花__
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次に目を覚ましたのは朝日が昇る早朝の頃だった。
身体の気怠い感じも抜け落ちて今ではすっかり体調も回復して動きやすくなった。心地の良いベットから身体を起こして両腕を上げてから真っ直ぐ伸ばした。
(本当に何もすることなく寝ちゃったな。)
『…あ、寝る前に紅茶など』
『俺がやるからゆっくりして』
『部屋の換気とかは』
『俺がやる』
『果物の皮剥きやりま』
『寝て?』
寝ようとはした。けれども何か働かないと落ち着かない。職業病を突かれたのは私にとって痛手だった。坂田さんは少しの隙も見せなかったのでやんわりと働こうとしても彼の謎の威圧によって呆気なく撃沈させられた。
しかし諦めの悪い私はあれこれと策を練っては実行したけれども完璧に対処され疲れきった私は自然と寝てしまった。
「A起きたー?」
ドアノックをされて私は「起きました」と返事を返すと坂田さんはドアノブを捻って部屋の中へと足を踏み入れた。
私は立ち上がろうとすると坂田さんは「ええから」とベットの中にいるようにと言われた。
「よく眠れた?」
「おかげさまで」
「A諦め悪かったからなぁ。まぁ可愛かったからええんやけど」
「…面目ないです」
そういえば昨日のテンションは途中から子どものイタズラみたいな感じになってたような気がする。…お恥ずかしい。
「あ、そうだ」
坂田さんは何かを思い出したかのように向き直ると自分の頬に柔らかい感触。瑞々しい柑橘系の香りが近くに来たと思ったら視界の端に赤髪が揺れたのが見えた。
「おはようのキス、忘れとった」
リップ音を鳴らして離れてから陽の光を浴びた彼は大人の男の顔を見せた。
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作者名:夜紅茶 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/qZN5vxyJ6V2/
作成日時:2020年6月21日 8時