sugar×47 ページ48
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満ちた月がAの部屋のベランダからよく見える今日。雲で隠れることもなく明かりもつけずに俺はその月を柵の淵に自分の腕を置いて満足気に見上げながらAの帰りを待っていた。
「…志麻、何してるの」
すると後ろから息を切らして呆然としながらこちらに視線を向けるA。雑に捨てられたスクールバックも置いて俺の姿に困惑していた。
人間の娘、こいつは悪魔じゃない。
「俺な、そろそろ行こうと思って」
その選択は辛くて苦しくて、けど溺れてしまう前にAの前から消えてしまって彼女の記憶の中から志麻という悪魔の名を消滅させればそれでいい。
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「どこに、行くの?」
それ以上は何も言ってくれなかった。その代わり志麻は何故か少し困ったような笑みを浮かべていてどこかに消えてしまうかのように私に別れのような言葉を言い放ってきた。
いきなり過ぎてよく分からない。理解が出来ない。
心臓の奥底が途端に苦しくて握りつぶされそうなくらい締め付けられているかのように辛くて感情がどこに行ってるのかも分からない。
「これで都合から出来た俺らの関係はおしまい。何も知らないまま終わりにして俺はお前の前から消えるだけ」
「…なんで」
「お前の記憶の中から俺は消える。俺が目の前からいなくなったらAは苦しい思いはしないやろ」
「そんなの理由になってないじゃん!!私の気持ちを勝手に決めつけないでよ!!」
咄嗟に私の体は勝手に動いていた。志麻に走って近づいて無駄な足掻きだとしても少しでも引き止めようと腕を掴んで私は志麻へしがみつくように抱きついた。けれども志麻は何も言うこともなく私の頭の上に自分の手を置くだけだった。
何も否定もしてくれない。志麻は自分の気持ちすらも言ってくれない。
「…悪魔は、人間と恋しちゃあかんの」
志麻はいつもより優しい声であやす様に私に話をしてきた。しかし恋という単語が出てきた瞬間私は志麻の方へと視線を移した。すると志麻は視線を真っ直ぐと貫くかのように視線を向けた。
だれと、だれが恋?
志麻は今までよりも綺麗な顔で薄い唇をゆっくりと開いた。
「__気づいたらさ、Aのこと好きやったみたい」
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夜紅茶(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます!続編を希望していただきありがたいです!一応こぼれ話としてなにか書けないか検討してみます! (2022年4月2日 11時) (レス) id: 2017f33955 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2022年2月21日 4時) (レス) @page50 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - さざんかさん» コメントしていただきありがとうございます!今後も作品を見守っていただければ幸いです! (2020年4月13日 9時) (レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - 普段全く他の方の作品にコメントする事はないのですが、この作品は本当にドストライクなので初コメ失礼致します…!完結おめでとうございます!悪魔と天使のお話も凄く深いなと思いました。。伏線も凄く気になります…!今作品関連作品が出たらまた読ませて頂きます!! (2020年4月13日 2時) (レス) id: 63429259c8 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - コメント、評価をしていただきありがとうございます!ご期待に添えるよう努力していく次第なのでよろしくお願いします! (2020年4月3日 22時) (レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/qZN5vxyJ6V2/
作成日時:2020年2月24日 22時