9 ページ9
「またねー！」
定時のチャイムが鳴って
今日も一人駅へと向かう
電車を降りて駅前を歩いていると
ショーケースに飾られた綺麗な指輪が目に入った
"プロポーズじゃない？"
さくらの言葉が頭でループする
(さくらがあんなこと言うから……)
"Aさん、待たせてごめんね……俺と結婚してくださいっ！"
私の前にひざまずいて小さな箱が
目の前でパカっと開けられる
中にはキラキラした綺麗な指輪
「いやいや、ないない……」
ショーケースから目をそらして
また歩き出した
(第一プロポーズだとしたら、1ヶ月待つ理由が分からないもん…)
ボケーっと歩いていると後ろから
「Aちゃーんっ！！！」
呼び止める声…
「北山さん？！」
振り返るとそこには北山さんが立っていた
「よかったー！俺、珍しく定時で終わったんだけど 残業が当たり前だったから何やっていいかわかんなくて……家帰っても誰もいないし、藤ヶ谷は連絡つかないし」
「ふふふっ！お疲れ様ですっ！」
嬉しそうに話す北山さんにつられて
私も気分が上がる
「メシでもどう？」
「えっ………と………」
「大丈夫、大丈夫！俺、反省したから……今日は酒なしで！ねっ？」
お酒が入らなければいいのかどうかも
よく分からないけれど
北山さんの強引さに負けて
近くの定食屋さんに入った
「いや、やっぱさー……1人で飯食うのキツくない？俺、最近 一人で晩酌すんのもキツいわ……」
「そうですか？私は一人のお酒がいい時もありますよ！」
「それは、玉ちゃんいるからさ……毎日一人じゃないじゃん？」
「まぁ……そうですけど……今は割と一人なんで……」
「あぁ……そうだったね……あれから何も変わらず？手がかりもつかめないまま？」
「1ヶ月待って欲しいって言われました……何も聞かずに……」
「はっ？1ヶ月？あいつ、何してんの？」
「それが……私も分かんなくて……そう言われたら"分かった"しか言えなくて……でも、待ちます…私、結局 玉森くんの事大好きだから待たない選択肢はないっていうか………」
「…………いいなぁ………俺、ホント後悔してる……いや、酒呑んでないけどさぁ……それでも、Aちゃんに会う度に思うんだ……あのまま付き合ってたらどうなってたかなって……プロポーズして結婚して2人で暮らしてて……なんて……。さっき……指輪屋さんの前で立ち止まってたでしょ？玉と……結婚するの？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 616人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆり | 作成日時：2019年4月29日 16時
