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「お疲れ様でした」
オフィスを出ると今日はやけに風が強い
背中を押されるように駅まで向かいながら
電車に乗り込んだ
最寄の駅で降りると改札の向こうに
見覚えのあるスーツ姿………
「北山さん……………………」
逃げ出そう……一瞬足が止まった……
別れを切り出されるに決まっている……
帰宅ラッシュに流されるように改札を出ると
気まずそうに笑う北山さんが
私に気づいて手をあげた
「お疲れ様です……今日は、お仕事早かったんですね…」
胸がしめつけられるような気持ちになる
喉がキュッとなって言葉が出てこない
「うん………今日はちょっと話したい事があって………」
「………」
溢れる涙を堪えながら北山さんについて歩く
「あのさ……実は、すごい言いにくいんだけど……彼女が帰ってきて……」
「………知ってます………実はうちのマンションの近くで言い合ってるのたまたま見かけちゃって……」
「そっか………ごめん……見苦しいところ見せて……」
ふるふると首を振る
もうわたしにはそれが精一杯だった
「ヨリを………戻すことになって……結果的にAちゃんの気持ち弄ぶ事になって………本当にごめん…あいつ妊娠してて………」
「…………謝らないでください……利用して欲しいって頼んだのは私ですから………」
こぼれ落ちそうになる涙を堪えた
(それは本当に北山さんの子供なの?)
責め立てたくなる気持ちを抑えて
精一杯の笑顔を見せた
きっとこれが北山さんに会える最後だ…
ならば、せめて私の泣き顔じゃなくて笑顔を覚えていて欲しい…………
キスしただけ………ただそれだけ………
始まってもいなかった……
だから、きっと終わらせられる……
「ごめん…これだけは直接言わなきゃって……待ってた…許してなんて言えないけどまた……」
「………彼女さんと幸せになってくださいね」
もう涙が止められなかった
逃げるように家へ向かって走った
走りにくいヒールを鳴らして
転びそうになりながら
目の前の景色はボヤけてよく見えない
せっかく綺麗に整えた化粧ももうボロボロで
階段を駆け上がって部屋へと戻った
電気もつけず玄関のドアにもたれると
我慢してきた心を解放するように
泣いた………………
泣いて泣いて………それでもまだ涙は止まらなくて………
泣き疲れて顔を上げると真っ暗な部屋の中に
ぼんやりとスープのお鍋が見えた
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作者名:ゆり | 作成日時:2019年3月30日 1時