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「あれっ?Aさん?」
「えっ?2人とも知り合いなの?」
藤ヶ谷先輩も玉森くんも目を丸くしている
「あっ、はい……ちょっと」
戸惑う私をよそに藤ヶ谷先輩は
「なんだよー!2人とも知り合いかー!俺、知らなかったからキューピッドやろうと思っちゃったじゃん」
「ぶっ!はぁ?キューピッド?」
出したばかりのお茶を吹き出しそうになる北山さん
「そう!北山、彼女と別れたって言ってたじゃん?だから!」
「いや、別れてないし」
「えっ?そうなの?」
"別れてないし"その一言に血の気が引いていく
(彼女いたんだ……)
咄嗟に
「では、私はお先に失礼いたします」
ニコッと笑って部屋を出た
お盆を抱えてトイレまで走る
溢れる涙が堪えきれなかった
(なんで聞かなかったんだろう…
なんで言ってくれなかったんだろう……)
勝手に一人で舞い上がっていた
食事に行けたことに
ご馳走してもらったことに
"また今度"と言ってもらえたことに
失恋ってこんなに苦しかったっけ……
久しぶりに感じる胸の痛み
グッと締め付けるような痛みを感じたのは
すごく久しぶりだった
ポロポロと溢れ出す涙を拭って
深呼吸をする
(深入りする前でよかったって思おう………)
若い頃に比べると
悲しさを隠すのが上手くなった……
傷つくのに慣れたのかもしれない
お盆を手に給湯室へと戻ると
「イケメンだった?営業さん」
無邪気に話しかけるさくら
「ごめん………後で話す」
一言だけ伝えてデスクへ戻る
無言のままパソコンへ向かった
何かをしていないと
堪えた涙が溢れそうだったから
仕事で頭をいっぱいにして
歯を食いしばりながら1日を過ごした
「帰り、どっか寄ってかない?」
心配そうに私を誘うさくら
「うん……ありがと」
2人で会社を出ると駅前のカフェに向かった
「夕ご飯前だけどいいよね!」
「いい、いい!疲れた脳には甘いものが染みるっ!」
大きなパンケーキをシェアしながら
コーヒーを飲む
「………何があったの?話聞くよ」
さくらの一言に涙が溢れ出した
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作者名:ゆり | 作成日時:2019年3月30日 1時