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「だから、行くなって言ってんじゃん！」
「私はミツとはもう終わったと思ったの！ミツだってそう言ってたじゃん！」
「言ってないって！お前が何も言わずに出てって帰ってこなかったんだろ？俺だって終わったと思ってたよ！」
「そもそも、いつも仕事でかまってくれないのはミツじゃん！」
「だから、ごめんって！でも、ポストに鍵入れたってことはお前が終わりにしたいって思ったからじゃないの？」
「……………違う………もっとミツに………でも、もう新しい彼女いるんでしょ？私、ちゃんと出て行くから心配しなくていいよ……本当、離して……」
「いや、待てって……出てくって…どこ行くんだよ？」
カツカツと駅に向かって歩く可愛らしい女の子と
それを追う北山さん………
「…………………」
「Aさん、大丈夫？」
「……………えっ？あぁ、うん……大丈夫………引っ張ってごめん……行こうか」
(どう見ても、出てった彼女だよなぁ………)
落ち込む気持ちとは裏腹に
"大丈夫"と気丈に振る舞う自分………
部屋の前まで着くと涙が溢れ出した
「…………玉森くんっ…………北山さん、戻って来なかったらどうしよう………」
「…………俺はいつでもAさんの味方です………」
言いようのない不安と大好きな人の見たくなかった部分………
歳を重ねて素直になれなくなった自分と
驚くほど素直なお隣さん………
気づけば玉森くんの胸の中で泣いていた………
「私、傷つきたくない…………」
「………俺を利用してください。今日だけでもいいですから………」
どこかで聞いた言葉が耳に張り付いた
いつかの私だ………
好きになればなるほど止まれなくて
傷つきたくないのに傷ついて
いつも不安で、不安定で
自分だけを見ていて欲しいのに
きっと絶対、そんな風にはなれなくて………
夜が明けるまで玉森くんは飽きもせず
私を抱きしめてくれていた
落ち着いたり、また泣いたり……
目の前で好きな人が他の男を想って泣くなんて
どれだけ心が痛かっただろう………
朝日が昇って部屋が明るくなると
吸い込まれるように眠りについた
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作者名：ゆり | 作成日時：2019年3月30日 1時
