ピーチメルバ JN (ページ18)

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それから、ソクジンさんがお手洗いに行ったので私はさっきよりも深く椅子に座ってひとつ、息を吐いた。

遠慮しないでって言われたけどやっぱり緊張してしまうのが事実。心臓を落ち着かせて、氷が溶けて水っぽくなったバニララテのストローを吸った。

しばらくカフェの人々を眺めてたんだけどお手洗いの割には長過ぎる時間が経って心配になっていると、「おまたせ」とソクジンさんが戻ってきた。

「ケーキ…」

トイレから戻ってきたはずの彼の手には、お皿に乗ったかわいいケーキ。…桃のケーキだ。丸っこいフォルム、断面にもいっぱい優しい色のスポンジとクリームが見えてて、角切りにされた薄い淡いピンクの桃もやっぱりかわいい。

「食べていいよ」
「…え？」

ケーキに釘付けになっていた顔を上げるとソクジンさんと目が合って、子どもをあやすみたいな優しい顔で見られた。

私が食べたいと思って買ってくれたのかな…でも、私一度もこのケーキが食べたかったなんて言ってないのに。

「食べないなら僕が食べちゃうよ？」
「いいです」
「嘘だよ。食べて？このケーキ食べたかったりしなかった？」
「え、はい！…あ、違くて…えっと」

ずっと食べたかったのに諦めてたケーキだったから、嬉しくて無邪気に返事しちゃったのが恥ずかしい。慌てて否定すると、彼はまた私を笑って

「Aちゃん見てると、なにかしてあげたくなるよ」

ってまた、サラッとなんてことを言うのか……。

「これは僕からのクリスマスプレゼントだよ。受け取ってくれる？」
「いいんですか…？」
「僕がしたいからしたの。いいかなんて聞かないで。あ、僕たちが出会えたお礼っていう意味もあるよ、あの時Aちゃんが転んでてくれてありがとう」
「……」
「うそうそ。はい、どうぞ」

私のことを揶揄うくせに、胸をギュッてされたみたいな気持ちにするし、私が食べやすいようにフォークを渡してくれるのもやっぱり優しくて紳士でドキドキする。

…昨日だけだと思ってたのに、まだあのゲーム続いてたのかな。
本当に恋愛ゲームのように優しくて甘いことばかり言うソクジンさんに頭が麻痺しそうになりながらも、私はフォークを手に取った。