ピーチメルバ JN (ページ13)

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はぁーと息を吐いて空へと上がっていく息を追いかけたら、

「うわぁ」

真っ黒に染まった空に散りばめられた屑のダイヤのような星と、耳に入ってくるクリスマスソング。じんわりと戻ってくる現実に、そういえばクリスマス前だってことをぼんやりと思い出させられた。

彼、いや正しくは彼の後輩さんに貰ったココアの缶を眺める。
なんだか今日はよく眠れそうな気がするかも。

少し固い蓋を開けてココアを飲み身体中に沁み渡る温かさを感じていると、ソラが帰って来た。

「A！先に出てたのね、よかった」
「おつかれ〜、楽しかった？」
「うん！！楽しすぎてすごい飛ばしちゃって」
「見てたよ、大丈夫だった？」
「うん。それよりA、転んだりしてない？ケガとか…ごめんねひとりにしちゃって」

あまりにソラが悲しい顔をするから、本当のことは言えなかった。転んだってことは嘘にしよう。

「大丈夫だよ！意外とできたんだ」

ぐっと親指を上げて笑ってみせると安心したように笑顔を溢すから、うん、これでいいんだ。

「あれ、それ、買ったの？」
「あーうん、ココアみたいな」
「へ〜美味しそう！…ひとくちだけ」

転んでないなら、あの人と出会うこともない。寒そうに肩を上げるソラにまだあたたかいココアの缶を渡してあげると、目を瞑って甘みと熱を感じていた。

…初めて嘘、ついちゃった。

ソラは私に対して過保護なところがあるし、私がひとりで出かけたり電車に乗るだけでとても心配するような彼女だから尚更、彼のことを口にするのに躊躇った。

多分もう出会うことはない人だから、これは私だけの思い出。少し苦しいけど秘密にするね。