ピーチメルバ JN (ページ12)

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「買ってきましたよ。これでいいんですよね」
「ありがとうジョングガ」

手の中に少し熱い缶。ジョングクさんと呼ばれる彼から受け取ったそれは、冷たくなった手には熱過ぎてちりちりと痒い。

缶にはミルクという文字が書かれていて、おまけにかわいい牛のキャラクターまでいる。かわいい…韓国のものって全部かわいいんだな、あとでソラにも見せてあげよう。

「気に入った？」
「はい！本当にありがとうございます」
「いいの。ほんとに大丈夫？もう真っ暗だから気を付けて帰るんだよ？」

返事をしようと顔を上げたときにはもうふたりは歩き出していて、私は慌てて立とうと思ったのに慣れないスケート靴のせいで間に合わなかった。

微かに見えた、私に向かって手を振る姿を記憶する。

…今までで濃い経験だったかもしれない。日本に居たってこんなことは稀にないし、あんなにいい人がいてよかった……。

あの人に拾ってもらった右手の手袋のうさぎの顔を親指で撫でる。ひとりになった途端どっと体に疲れが出てきて、腰も肩も重い。ずっと気張ってたもんね、今まで特に気にしなかった今日の疲れに、彼がずっと私に気を遣ってくれていたのだと気付いた。