金魚鉢。 (ページ27)

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─────…

A裕くん、会いたい。

ジミンさんの部屋を出てすぐに、
私は初めて裕くんに自分から連絡をした。

すると裕くんからの返事は、
“俺も。”、なんて言う少ない単語と住所。

そこに向かえば、
大きなマンションがそびえ立ち、
エントランスには
しっかりとしたセキュリティ。

『...早よ、入り？』
「うん、お邪魔、します。」

裕くんの匂いでいっぱいの空間。

久しぶりの裕くんを見れば、

鼻がツンとして、

伝えようと決めた心が

グラグラと揺れそうになる。

『ふっ、お前が俺ん家に居るん不思議な気ぃするわ。飲み物お茶でえぇよな？』

なんておどけて私の緊張をほぐそうと、
明るく振る舞ってくれる。

「...裕くん、こないだは、その..ごめんなさい。」

リビングに突っ立ったまま私がそう言うと、
ポンポンと自分の隣を叩いてソファーに座る
よう促す裕くん。

『全然えぇよ。俺も急にあんなん言うてしもたし、お前の気持ち考えてやれんかって..俺もごめんな。』

「うぅん、裕くんは何も悪くないよ。だって、...裕くんが言った通りだったもん。私達、間違ってたね。」

『...うん。』

「..私っ、裕くんのこと結局は、

“アイドル”としてずっと縛ってただけだった。
…苦しかったよね、ごめんね。」

『...Aっ、』

「...自分の推しを苦しめるなんて、こんなんじゃファン失格だ。」

『..お前がそんなん言うたら俺どないなるん。』

「...え？」

『俺は、アイドルなのに１人のファンを好きになってもうて、
でもこの先もきっとその好きな女を背負ってやれへんなんて、アイドルとしても男としても失格やんけ...』

「...裕くん。」

『だからお互い様やねんて。俺達は２人で間違うた道選んで来てしもたんや。』

そう言って切ない顔して私を見る裕くん。

そうだね、と私が頷けば
どちらからともなくキスをする...

これが“最後”...

もう二度と、触れることのない肌...

もう二度と、
触れられることのないこのカラダ...

もう二度と、

呼び合うことは許されない名前...

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「っ、んぁっ…ゆ、くんっ…」
『…っ…くらい…っ、呼んで…ほんまの名前っ…』

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──…

『……好きや…っ、

　好きやでAっ…』

「んぁあっ…、…きみ…たか…
　 …すきっ、はぁっ…あっ……」

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