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それでも明日はやって来る。
この言葉は、ポジティブなのか
ネガティブなのか...
あれから3日と休みを貰って、
辞めさせてくれと頼んだ。
裕くんの瞳に映れないのなら、
私がこの業界に存在している
意味がないから。
それでも、
今入っている予約だけはと頼まれて、
残り3ヶ月もの間、私は無意味に
泳ぎ続ける事となった。
私はもう、綺麗になんか泳ぐ気力など
微塵も持ち合わせていないのに、
『こんなに良かったのは朝霧が初めてだ。』
「ふふっ、ご冗談を。
女性が放っておかないでしょう?」
『ん?まぁ、ほどほどにな(笑)』
「そんな、妬いてしまいます。
それなら上書きされぬよう、もう一度、私を泳がせてくんなんし。」
『朝霧…そうかそうか、もういっぺん泳がせちゃろう。』
あの日、裕くんは言った。
“お前は普通の女の子”、だと。
こんなにも、苦しむことなく
自然と出て来る手練手管と床の技...
コレをいったいどこの誰が、
“フツウ”などと言うものか。
“普通”など、
私にとって、贅沢すぎる代物だ。
『朝霧さんお疲れ様ですー!明後日なんですけど、西条の大旦那様のお座敷なので京都まで遠征お願いしますね♪あちらの置屋の方には言ってありますから。』
「西条様ですね、分かりました。」
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『お〜!朝霧、久しぶりじゃのぉ〜!』
「ご隠居様、お久しぶりでございます。」
この人は、私がこの店で
初めて接客した殿方。
“朝霧”の名付け親。
私にこの世界の生き方を
教えてくれたと言う意味では、
とても大事なお爺さん。
ちょうどいい、
この人だけには辞めることを伝えよう。
そう思いながらご隠居の隣に座り、
お座敷に呼んだ舞子さんや芸者さん達の
舞や三味線の音色を聴いていた。
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『最近わしゃ男としてはめっきりなってしもうたわい。ただお前の事は京都に越しても心配だったんじゃ。』
「ご隠居が元気で居てくだされば、私はそれが1番です。」
『朝霧?お前3年前と随分変わったなぁ〜。』
「ふふっ、あの時の私はまだまだ素人でしたものね?」
『いんや、今のお前には何も無くなってしもうたみたいじゃ。』
「えっ...」
『ほぉ、図星か。お前、抜け殻みたいじゃ。』
「...ご隠居は、何でもお分かりになるんですね。」
『これも年の功かのう?はっはっは(笑)』
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作者名:ぽん | 作成日時:2019年10月2日 16時