褪色する春＿skab

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うどんを食べながら見ていると一話目が終わった。


「佐久間の好きな子は出ないんだね。」
「そうそう、第一期の後半で出んの。」
「しばらく先だ。」
「うん、でも阿部ちゃんに紹介するにはちゃんとストーリー踏まえないと良さが伝わん無いなと思ってさ。」


その道の人ならではのこだわり、ってやつなんだろうか。
なんて思っていると次のエピソードへ進むという表示とそのカウントダウンが進んでいて、自動的に二話が始まった。


「だから二話も俺の嫁は出ないけど、話は楽しいから見て。」


また目が無くなっちゃうくらいニコニコな笑顔。
本当に好きなんだなってのが伝わってくる。
だから佐久間の好きなキャラクターが出なくたって、その笑顔見たさに俺は続きをいくらだって見れちゃいそうだ。



「ああ、だから一話であんなこと言ってたんだ。」
「そう、そうなんだよ！
めちゃくちゃ感動しない！？
こんな熱い思いが隠されてんのよ。」
「なるほど。
これは感動するのも分かるかも。」


二話目にして早くもストーリー自体に引き込まれる。
既に何回も見てるだろう佐久間もテンションが上がってる。


「あーっ、阿部ちゃんめっちゃ分かってくれんじゃん！
最高だわ。」


そんな簡単に最高とか言われると、深い意味なんて無いのは分かっているのに照れてへへっと笑ってしまうのを抑えきれない。


「ありがとう。
その道の人にそう言ってもらえるのって嬉しい。」
「やあ、だって話の繋がりとかセリフに隠された真意をちゃんと考えながら見てくれるじゃん。
あ、でも阿部ちゃん聞き上手だから俺ばっか喋っちゃってたかも。」


急にやべっ、て顔する佐久間。
聞き上手なんて初めて言われたけどね。
だって多分、佐久間の話だから聞きたかったってだけなんだよ。


「佐久間の話面白かったからもっと聞きたいくらいだよ。
でもこんな時間までお邪魔しちゃったし、そろそろ帰らないと。」


二話のエンディングソングをＢＧＭに時計を見ればもうとっくに昼過ぎ。
助けてもらっておきながら長いこと寛いでしまった。


「そっか。」


と佐久間が言って、それから、真っ白だけど男の人って形の手が俺の両頬を包んだ。
突然すぎる行動に驚きすぎて目を見開いたまま固まる。
けど佐久間はそんなこと気にせず俺の目を覗き込んで


「ん、顔色ももう大丈夫そうかな。」


なんて言ってのける。

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