褪色する春＿skab

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「っ、」


目が覚めてあまりの顔の近さと、二の腕あたりにだらりとのせられた佐久間の腕の重みに驚く。
抱き込まれてるのとは違うけど、どうして良いか分からない微妙な拘束具合というか。

目だけ動かして置いてある時計を見たら十時前。
どうしようかな。
資格試験の勉強道具は少し鞄に入れてきたから、それでもして佐久間が起きるの待ってようかな。
でも折角だし、もう少し佐久間の寝顔、見てようかな。
じーっと見つめてみる。
この前も観察したけど、二回目でもまじまじと見ちゃう。


「んん…。」


あれ、起きそう？


「んー、…あ、べちゃ、」


起き、た？
起きてくれたら良いな。
そんな思いを込めて、気付かれないようにひっそりと、佐久間が着ているロンＴの裾を掴む。
まん丸の目が、少しだけ開いた。


「佐久間。」
「うえ…、」
「起きる…？」


じっと目を見る。


「んー、」


どうかな。


「…起きる！」
「わっ、」


ガバッとキツく抱き込まれて目を見開く。
近いとかそんなの通り越して、自分の体の側面がぴたりと佐久間に密着した。


「ぬくぬくー。」
「や…あの…、起きるって話は…？」


心臓が全力ダッシュしてるみたいな速さでバクバクしてる。
それをなるべく隠そうと冷静な振りをして話しかける。


「や、起きるんだけどさあ。」
「うん…。」
「阿部ちゃんいるなーって。」
「そりゃ、泊めてもらったから…。」


うん、顔がちょっと熱い気もするけど、冷静さは装えてるはず。
と思ったのに、急におでこ同士をくっつけられて、


「ん、いつでも来て良いよ。」


とか…。
朝から幸せさがハードでどうしよう。
すぐにおでこは離れたからなんとか心臓は止まらなかったけど、そう思っちゃうくらいには心臓に悪いと思う。


「今日は桜見に行くんだよね。」


あ、約束ちゃんと覚えててくれてた。


「うん。
朝ご飯食べてから行く？」
「んー、駅前行くんでしょ？
桜見たらどっか店入ろ。」
「分かった。」


ブランチだね。
そうと決まったらちょっと名残惜しいけど出掛ける準備をしなきゃ。
服は持って来てるからそれに着替えて、俺用に出してもらった歯ブラシで歯を磨いて。
うん、１１時前には出られそう。





「すご、満開だ。」
「ね、綺麗。」


淡いピンクが視界に広がる。
スマホを取り出して写真を撮った。
佐久間も撮ってる。
だからそんな佐久間をパシャリ。


「え、俺だけ？」
「うん。」
「なんでだよ。
一緒に撮ろ。」

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