十七話 ページ18
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A Side
「無一郎くん、お願いがあるんだけど……」
「何?」
「稽古をつけてください!」
「……は?」
もし私が無一郎くんの邪魔になっているなら、私はもっと強くなるしかない。だから、今日は非番の無一郎くんに稽古をつけてもらうことにした。案の定、無一郎くんは「何言ってるの?」と言わんばかりの困惑した顔だ。
「や、やっぱりせっかくの非番の日だから休みたい……よね。ごめん、なんでもないです」
そりゃそうだ。無理を承知で言ったのだから、落ち込む必要はない。無一郎くんがずっと私を見つめているから気まずくなって、私は「お茶を入れてくる!」と席を立ち上がった。
「いいよ」
と、立ち上がった瞬間、無一郎くんに言われた。
「えっ? ……あっ、お茶は私が飲みたいの! 気にしないで!」
「いや、そうじゃなくて。稽古の話だよ」
「えっ! けけけ、稽古つけてくれるの!?」
私は驚きのあまり無一郎くんの前に正座して身を乗り出す。
「う、うん」
「ええええええ! やったあ! ダメ元だったのに! やばっ、うれしっ! 今すぐ用意してくる! 服は袴でいいかな? 真剣だと危ないから木刀がいいか!」
私は嬉しさのあまり跳びはねながら支度をした。その間ずっと無一郎くんが下を向いていたのが気になったけど、まあいっか。さあ、霞柱との個人稽古。張り切っていくぞ!
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作者名:Rabbita | 作成日時:2020年5月9日 14時