輝くダンサーと見守る親子�� ページ27
夕方前。
あかねを連れて、駅前の弁当屋へ行った。
今日の夜ご飯は智もいないし、お弁当でいいかとあかねに聞いたら、とっても良い返事が返ってきた。
二人して店の前のショーケースをしばらく眺めた後、俺はハンバーグ弁当、あかねはお子様カレー弁当に決めた。
注文をして、数分店の中で待った後、弁当を受け取ってあかねと一緒に店を出ようとした時。
ブーンと自動ドアが開いた瞬間、目の前を親子が通り過ぎて行った。
あかねとちょうど同じ歳くらいの女の子と、その母親であろう女性が、手を繋いで歩いていた。
ごく普通のどこにでもある光景だが、なんだか複雑な気持ちに覆われた。
すると。
弁当の入った袋を持っていない方の、ぶらんと下ろしている俺の手を、あかねが両手でキュッと握ってきた。
小さな手だけど、それなりに力がこもっている。
母親と娘が手を繋いで歩く姿に、何かを思ったのだろうか。
あかねは俺の手を握ったまま、何も言わずに下を向いている。
だけど、その俯き加減がなんだか寂しそうで。
今の光景を見て、母親が恋しくなったのだろうか…。
何て声を掛けていいのか分からない俺は、あかねの小さな手を握り返し、手を引いて家の方へと歩きだした。
手を繋いで歩く俺達の姿は、きっとはたから見たら、父親と娘が手を繋いで歩いている光景に見えているんだろうな…
家に帰ってきてからも、あかねは元気がない。
いつもはうるさいくらいに俺を呼んで、「みて〜」だの「パパ、コレやろ〜」だの言ってくるのに、今は、しょんぼりとラグの上に座っている。
その姿が、あまりにも可哀想で。
今までわざと母親のことには触れないようにしていたけど、さすがにもう限界だと思った。
俺は悲しそうに座るあかねの隣に、膝を折って座った。
ニ「あかね…」
茜「…パパ…ママどこいるのぉ…？」
ニ「…う…ん…それはだな…」
茜「…ママ…こないの…」
ニ「あー…いや…そのうち来ると思うからさ」
茜「…ママにあいたい…」
ニ「あっ…」
茜「…マぁマっ…ふえぇっ…マぁマぁぁっ…」
ついに、あかねが泣き出した。
あかねがウチに来てから、初めて泣いたんだ。
今まで我慢していたものがプツンと切れたかのように、大声を上げて大粒の涙を流しながら泣いている。
そのあまりに可哀想過ぎる子供らしい姿に、俺は頭で考えるよりも先に、泣きじゃくるあかねをそっと抱き上げ、自分の腕の中におさめた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年5月19日 14時
