戸惑いと迷い�� ページ22
【二宮和也】
ベッドでスヤスヤと眠るあかねを、隣で肘をついて寝転がりながら見下ろした。
智はまだ帰ってきていない。
いつもはベッドに横になったらすぐに寝るあかねが、今日に限って寝付きが悪く。
仕方がないから俺も一緒にベッドに横になって、お腹の辺りをポンポンとしながら、歌をうたってあげていた。
3曲目に突入したところで、ようやく寝息を立て。
それでもしばらくは、お腹を同じリズムでポンポンとしていた。
無邪気な寝顔を見下ろしながら、大きく息を吐いた。
こんな日が、あとどのくらい続くのだろうかって。
今日一日ひとりであかねの世話をしていて、正直、オールで二日間働いたくらい疲れた。
元々家事も得意でない俺が、一気に育児までこなさなきゃいけなくて…
智がいない分、全て自分に負担が掛かるのが本当に辛くて。
智の仕事は、時間が不規則だっていうのは分かっている。
今日みたいに一日掛かりになることなんて、ザラだと思う。
だけど、その度にこんな一日を繰り返すのだと思ったら、気が遠くなってぶっ倒れそうになる。
一体、いつになったら母親は迎えに来るんだよ。
いつまで俺に、あかねを預けておくつもりなんだよ。
このままこんな日が続いたらと思うと…自信がなくなる。
あかねは可愛いよ。
だけど、段々可愛いがる余裕もなくなるんじゃないかって。
何もかも嫌になって、智にあたっちゃうんじゃないかって。
そんで…
智とも上手くいかなくなっちゃうんじゃないかって…。
もしも、母親がこのまま迎えに来なかったら。
もしも、本当に俺が父親で、一緒に暮らしてなんてことになったら。
俺はどうしたらいいんだよ…
色んな悩みが頭の中をグルグルと回っていて、答えが見つからない。
早く迎えに来い。
自分が父親じゃなければいいのに。
そんな冷たい感情が俺を支配していて。
目の前の天使のような寝顔に、重たい溜息しか吐いてやれない。
疲れきった俺の視界が真っ暗になった頃。
ガチャッと響く鍵の音にも、自分の大好きな優しい声にさえも気付かなかった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2018年5月19日 14時
