狂人島【オワリの始まり編】 (ページ32)

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姿を消した親友② ページ32

遠くなっていった意識が強引に引き戻され、ゲホゲホと口に入った海水を吐き出した。

俺の身体が、波打ち際の方へと引っ張られていく。

そして、砂浜の方へ放り出された。

海に流されていた俺の身体を、誰かが引き戻したんだ。

ハァハァと荒い呼吸を繰り返しながら、必死に俺を海の中から連れ戻したのは・・・

和「はぁっはぁっ…何やってんだよっ！！！」

紛れもなく、ニノだった。

ニノが俺に怒鳴っている。

　
ニノが・・生きている。

雅「げほげほっ……ニノっ！」

和「俺を置いて、一人で勝手に死ぬとかナシだろーがっ！！」

砂の上に倒れ込む俺達の身体に、何度も何度も浅い波が寄せては返す。

濡れて纏わり付く衣服。

重くなった体を這うように必死に動かして、ニノのすぐそばまで寄った。

そして、濡れた手で柔らかい頬に触れた。

雅「ニノがっ…生きてるっ…！」

和「当たり前だろ！勝手に人を殺すなよ！」

雅「だ、だってっ…起きたらニノがいなくなってたからっ…俺はてっきりっ…」

和「あんたが寝てる間に、荷物を取りに行ってただけだよ！」

そう言ってクイッと親指で差した方向に目を向けると、リュックが置いてあった。

雅「えっ…取りに行ったって…あそこに戻ったの…？」

和「そうだよ」

あそことは、大ちゃんや潤くんが居る場所。

雅「なっ、なんで…！？」

和「水が欲しかったんだよ。確か、あと何本かリュックに水が入ってたなって思ってさ」

確かに俺も喉がカラカラだ。

それに、食料が無くても水さえあれば少しは長く生き延びることが出来る。

だけど。

あそこに水を取りに行くということは、想像以上に危険なことだ。

大ちゃんや潤くんや渡辺さんの身体には、沢山の赤い羽根の虫がとまっているだろう。

荷物を取りに行った時に、刺されてしまうかもしれない。

あるいは、狂人と化した翔ちゃんと出くわして、殺されてしまうかもしれない。

そんな危険を冒してまで、一人で取りに行ったニノ。

何故そんな危ないことをしたのかと怒りで体が震え、ニノの濡れた服をグッと掴んだ。