狂人島【オワリの始まり編】 (ページ25)

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友との決別① ページ25

潤くんが息を引き取った後も、翔ちゃんはしばらくの間、潤くんを抱き締めていた。

再び訪れた親友の死に、俺達はただただ涙を流すことしか出来ない。

俺達の焚いた小さな灯火は、潤くんの命が果てたと共に、命が燃え尽きたかのように静かに消えた。

無造作に転がった複数の懐中電灯の光だけが暗闇に浮かぶ。

俺は、力の入らない脚を無理矢理立たせ、フラフラと渡辺さんの方へ近づいた。

転がる懐中電灯を手に取り、倒れている渡辺さんを照らした。

渡辺さんの身体とその周りは、おびただしい量の血で染まっている。

顔にライトを当てると、渡辺さんのメガネがキラリと光った。

しかし、そのレンズの下の目蓋は固く閉じられていた。

この出血量から考えて、恐らく渡辺さんも、もう息をしていないだろう。

親友の死の後だからか、渡辺さんの死に対する悲しい気持ちは、ほとんど無かった。

だけど、これで生き残ったのは俺とニノと翔ちゃんだけになってしまったことに、空虚感なんて言葉では足りないほどの虚しさに襲われた。

この島には、10人の生きた人間がいたはずなのに…。

そんなことを考えながら、意味もなく渡辺さんの身体を懐中電灯の光で照らしていた。

和「雅紀っ…後ろっ！！！」

突然聞こえてきたニノの声で、背後へ顔を向けた。

俺のすぐ後ろに、ゆらゆらと飛び回るモノがいた。

あの赤い羽根の虫だ。

俺はすぐに手で振り払った。

懐中電灯の光で空中を照らすと、既に何匹もの虫が飛び回っていた。

渡辺さんの遺体に寄ってきたのだろう。

すぐそばにいる俺の周りにも纏わり付いて、俺は必死に手を振り回した。

渡辺さんの遺体から徐々に離れていき、ようやく纏わり付いていた虫も離れていった。

ニノの方にライトを当てると、ニノの周りにも虫が纏わり付いていた。

潤くんの方へ寄ってきた虫だろう。

ニノも大きなスコップで必死に振り払っていた。

潤くんを抱き締めたままの翔ちゃんの周りを飛ぶ虫も、一緒に振り払っている。

これ以上、ここにいるのは危険だ。

暗闇に浮かぶ赤い集団に目眩がした。