狂人島【オワリの始まり編】 (ページ18)

今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:26,733 hit

絶対に連れて帰る① ページ18

渡辺さんに手を貸せと言われ、俺と翔ちゃんは仕方なくタカコさんの遺体を埋める手伝いをした。

渡辺さんが再び土を戻し、足で土を踏んで固めた。

なんだか、犯罪に加担している気分になった。

渡「よし。では、彼女の恋人の死体は俺が処理するから、キミ達はお友達の死体を埋めるんだな」

翔雅和「えっ」

渡「親友の死体は、親友のキミ達で埋めてあげたいだろう？」

潤「ちょっ…待てよ！！智をこんな所になんか、埋められるわけねーだろっ！！」

渡「何を言ってるんだ。話を聞いていなかったのか？」

潤「智をこんな無人島になんか埋めてたまるかよっ！！智は俺達と一緒に帰るんだよ！！」

翔「潤…」

渡「やれやれ…。仕方ない、俺がお友達を埋めてあげるしかないようだな」

呆れたように深く息を吐くと、渡辺さんは地面に刺さっているスコップを引き抜いた。

潤「やめてくれ！！智だけは絶対に埋めたくないんだよ！！」

潤くんが、渡辺さんを阻むように立ちはだかった。

渡「どけ。もう時間はないんだ。さっさと埋める」

潤「ふざけんな！！智をこんな所に置き去りにしてたまるか！！俺がぜってー連れて帰るっ！！」

そう言って潤くんは、大ちゃんのいる方へ走っていった。

翔「おい、潤っ！！」

和「…Jの言う通りだよ。智をこんな所に埋めるなんて嫌だよ」

雅「そうだよねっ…！俺達も大ちゃんとこ行こっ‼」

渡辺さんを軽く睨んだ後、俺達も急いで大ちゃんの居る場所へ向かった。

いくらあの危険な虫を呼び寄せてしまうとはいえ、大事な親友をこんな所に埋めることなんて絶対に出来ない。

大ちゃんは連れて帰るんだ。

残った俺達4人は絶対に生きて、5人で一緒に帰るんだ。

そう思って、あの虫から全力で大ちゃんを守ろうと、大ちゃんの元へ駆けつけた。

俺達が焚いた火はまだ残っていた。

パチパチと音を立てて小さく燃えている。

その小さな炎の近くで、潤くんは大ちゃんの上半身を起こして抱きしめていた。

ゆらゆらと揺れる炎。

潤くんに抱きかかえられている大ちゃんの、力の入っていない手足の上で、真っ赤な羽根が揺れていた。