狂人島【オワリの始まり編】 (ページ16)

今日:22 hit、昨日:0 hit、合計:26,746 hit

生き残るための手段① ページ16

渡辺さんは俺達のすぐ前まで来ると、その場にしゃがんで、大きなスコップを地面に置いた代わりに、腰に掛けているサバイバルナイフを引き抜いた。

そして、そのナイフでニノの足に絡み付くツタを切ってくれた。

和「…すいません…ありがとうございます」

ニノが小さな声でお礼を言って立ち上がると、渡辺さんはナイフを腰に引っ掛けながら、チラチラと周りを見回した。

渡「あの丸顔で垂れ目の青年はどうした？」

丸顔で垂れ目の青年・・・

大ちゃんのことだろう。

何て答えていいのか分からず、俺達は黙ったまま下を向いた。

すると

潤「…智は…死んだ。…俺が殺した」

潤くんが下を向いたまま答えた。

渡辺さんは黙ったまま潤くんの方を見ている。

潤「…智も感染してっ…智が翔くんを殺そうとしてたからっっ…俺が智を殺しちまったっっ…っ」

潤くんは辛そうな顔で声を震わせながら言った。

すると渡辺さんが、ふぅ…と深く息を吐いた。

渡「なら仕方ないだろう。適切な判断だ。悔やむことはない」

潤「はっ！？親友を殺したんだぞっ！？」

渡「親友だろうが仲間だろうが今は関係ない。ここで生き残るにはそうするしかないんだ」

雅「そんなっ…」

渡「そうでなければ自分が殺されるんだ」

雅翔和「………」

渡「今後、キミ達の中で感染したとみなした奴がいたら俺は容赦なく撃ち殺す」

翔和「えっ‼」

雅「ちょっ、ちょっと待ってよ！！」

俺達の反応に、渡辺さんは冷たい眼差しを向ける。

渡辺さんのかけているシルバーのフレームのメガネが、より一層冷たい表情を引き立てている。

親友を殺すことなんて絶対に出来ない。

そう言おうとした、その時。

潤「…その通りだよ……」

潤くんは思いつめたような表情で俺達に言った。

翔「おまえ、何言ってんだよ…」

潤「今後もし俺が感染したら、その時は容赦なく俺を殺してくれ」

翔「出来るわけねぇだろ」

潤「これは俺からの頼みだ。感染した俺に、情なんか捨ててくれ」

翔雅和「………」

潤くんの重い言葉は、俺達の胸に深く突き刺さった。

『感染した俺』という言葉が、俺には『智を殺した俺』と言っているように聞こえた。