生存者�� ページ12
大ちゃんが亡くなってから、どのくらいの時間が経ったのだろうか。
俺達はどのくらいの時間泣いていたのだろう…。
目の周りが痛いくらいに涙を流して、きっと涙も枯れ果てたろうと思うのに、少しでも気を緩めれば、またいくらでも溢れ出しそうだ。
ようやく3人の呼吸が整ったところで、大事なことに気が付いた。
潤くんがいまだに戻ってきていない。
なんだか、ものすごく嫌な予感がする。
そう思っているのは俺だけではないはず。
3人で顔を見合わせると、それぞれが無言で立ち上がり、懐中電灯を持って、潤くんが歩いていった方へと向かった。
風で木がゆらゆらと不気味に揺れる中、暗い森の中を懐中電灯の明かりだけを頼りに歩いた。
時折、茂みからカサカサッと音がして、その度に俺達はビクッと肩を揺らした。
ビクビクしながらも森の中を歩いていると、微かに声が聞こえた気がした。
雅「ねぇ…今、声聞こえなかった？」
翔「えっ、マジで…？」
和「J の声…？」
雅「いや…潤くんでは…」
一瞬だけ聞こえた声。
でも、潤くんの声ではなかった。
女の人の声のように聞こえた。
3人で辺りをチラチラと照らしながら見回していると、少し離れた所にテントが張ってあるのを発見した。
見覚えのあるテントだ。
翔「あれって、あのカップルのテントじゃね…？」
雅「あっ、そうだ！」
和「あの二人、あんなとこにいたんだ」
テントが張ってあるってことは二人とも無事なのかな…？
親友を失ったからか、自分にも彼女がいるからか、あの二人にも無事でいてほしいと心から願った。
と、その時。
「………アイシテルわ……」
再び女の人の声が聞こえた。
今度は3人とも聞こえたようだ。
この声はタカコさんの声だ。
『アイシテル』と言っていた。
彼氏のタクミ君に言ったのだろう。
こんな状況になって、彼氏に愛の気持ちを伝えているのだろうか。
なんだかその声が震えていた。
泣いて震えている感じではない。
恐怖で震えている感じでもない。
不気味に笑いながら言っているように聞こえた。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2021年2月6日 0時
