狂人島【オワリの始まり編】 (ページ11)

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悲しみに暮れる仲間たち⑤ ページ11

翔「…なぁ…」

翔ちゃんが、空気を多く含んだ声でボソッと言った。

翔「…智くんさ…最後に何つったか聞こえた…？」

泣いて真っ赤になった目で俺とニノの方を交互に見ながら、枯れた声で言った。

雅「…最後…」

和「………」

最後とは、死ぬ寸前という意味だろう。

ハッキリとではないが、俺の耳に届いた言葉を言おうとしたその時。

翔「『翔ちゃん、逃げて』て言ったんだぜ…？」

翔ちゃんは目に涙を浮かべながら、引きつった笑みを見せた。

『翔ちゃん、逃げて』

俺の耳にも、確かにそう聞こえた。

和「…それってさ…最後に我に返ったってことだよね…」

そう。

大ちゃんは死ぬ直前に我に返ったんだ。

我に返って、狂気的になった自分から『逃げて』と翔ちゃんに言ったんだ。

翔「…自分が苦しんでる時にさっ…なんであんなことが言えんだよっ…！！」

潤くんに力いっぱい首を絞められて、相当苦しかったはず。

我に返ったのなら『助けて』と言えばいいのに。

大ちゃんは自分よりも翔ちゃんの心配をしたんだ。

あの言葉は、最後の最後に見せた、大ちゃんの優しさだったんだ…。

翔「…智くん…あああ…っ…智くんっっ…！！」

翔ちゃんの目から、ボロボロと涙が零れ落ちた。

誰よりも間近で、大ちゃんが息絶える瞬間を見た翔ちゃん。

そんな自分に、最後に残した大ちゃんの言葉が、いかにも大野智らしいところが、翔ちゃんを余計に悲しみのどん底へと突き落とした。