台風の夜に�� ページ30
翌日。
朝からずっと、強い雨が降り注いでいた。
その雨は、次第に風と共に強さを増していった。
夕方を過ぎて夜になった今、本格的に台風が接近している。
強い雨風が雨戸をガタガタと鳴らし、リビングのテレビの音量をいつもよりも上げないと聞こえなくらい外が大騒ぎしている。
そんな荒れた空の音が響くこの家には、俺と兄貴の二人だけ。
親父は今日出張で帰って来ないし、お母さんは古い友人のお見舞いに行くと言って午前中に家を出て行ったのだけど、台風の影響で飛行機が欠航して今日は帰れないと連絡があった。
だから、夜になった今も、兄貴と二人きり。
俺は今日、仮病で学校を休んだ。
どうしても潤くんと顔を合わせたくなかった。
そんな俺に、潤くんは何通ものLINEを送ってくれた。
『風邪？』
『大丈夫？』
『無視すんなよ』
『もしかしてまだ怒ってる？』
『昨日のこと、誤解だよ』
『ちゃんと話がしたい』
全て既読スルーしているうちに、今度は電話がかかってきた。
だけど俺は、一度もその着信には出なかった。
なんでこんなにも怒っているのか、自分でも分からない。
ただ、今となっては怒っているというよりも、不貞腐れているだけなのかもしれない。
なんだよ…て。
潤くんのばか…て。
別に潤くんは悪いことなんてしていない。
それは頭では分かっているのに。
どうしようもない感情が付き纏って、ムカムカがどうしてもおさまらなかった。
兄貴と二人きりの夜ご飯は、家にあるカップラーメンで簡単に済ました。
その後、お風呂で髪の毛を洗っているところに兄貴が乱入してきた。
いつものことだから、俺は最近拒むことなく普通に受け入れている。
生理中はさすがに遠慮していたのか乱入してこなかったけども、今はまた当たり前のように一緒にお風呂に入っている。
もう慣れてしまった。
いつの間にか、兄貴と一緒に入るのが当たり前になっていたんだ。
お風呂を済ませた俺達は今、リビングのソファに座ってドラマを観ている。
俺はソファの背もたれに寄り掛かかってダラリと座っているのに対して、兄貴はソファの上であぐらをかいて座っている。
隣にいる兄貴をチラリと見ると、集中してテレビを観ている様子。
その兄貴に昨日、帰ってきてから「誤解だよ」て言われたけど。
結局俺は、兄貴の話を聞こうとしなかった。
そんな俺に、兄貴はそれ以上何も言ってこなかった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年5月3日 21時
