繋がり�� ページ6
それから俺の親父と智の母親は、3月の中旬に入籍した。
手続き関係がややこしくならないよう、俺と智が学校を卒業して入学する前というタイミングで。
この歳になって血の繋がらない兄弟になるなんて、普通はもっとギスギスするものだと思うけど、不思議とこの人とはそんな雰囲気にはならなかった。
むしろ、こんな微妙な年頃の義理の兄弟にしては仲が良い方だと思う。
俺は智に対して一切嫌な気持ちは抱かなかった。
それはきっと智もなのだと、俺に対する接し方でなんとなく分かる。
再婚に伴う新しい人間関係は割と深刻なものだったりするから、正直ホッとした。
だけどその反面、どこか一線を引いておきたいという気持ちもあった。
それはきっと他界した本当の母親に対する、新しい家族に馴染んでしまうことへの申し訳なさから来ていたのだと思う。
だから俺は、智とはずっと一定の距離を保って接していた。
でもあの日。
入学して初めて櫻井先生に声をかけられて智と仲良くしてあげてと言われた日から、俺の意識は少し変わった。
それまでは「ねぇ」とか「あのさ」としか呼ばなかった智のことを「兄貴」と呼ぶようになった。
今ではすっかり兄貴と呼ぶことに慣れてしまったくらい。
とは言え、意識的には兄貴という感覚はあまりなくて、ただのあだ名として呼んでいるような感覚だけど。
それでも以前よりも智との距離を詰められるようになったのは、100%櫻井先生の影響だった。
そんなことをしみじみと思い出しながら、いまだに制服のままベッドで両手に重心を乗せてぼーっとしていると、再び部屋のドアが開いた。
智「かず、そういや明日からの金土日で母ちゃん達、新婚旅行行くっつってたけど、聞いた？」
ニ「ええ⁉新婚旅行行くって話は聞いたけど、明日からだったの⁉」
智「らしい。3日間飯どうすっか」
ニ「そりゃあ、3日分のお金貰って、買いに行くか食べに行くかのどっちかでしょうよ」
智「作る気ないんだ(笑)」
ニ「ないよ。逆に兄貴が何か作ってくれるの？」
智「んや」
ニ「ほらね」
智「うし、金貰おう！」
フンと鼻の穴を広げて見せて再び部屋を出て行った。
そっかぁ、明日から親父達いないのかぁ…
国内で済ませると言っていた新婚旅行、ぜひとも行っておいでって思うけど。
明日からの3日間、智と二人きりだなんて。
智のことは嫌じゃなくても、やっぱりどこか憂鬱だった。
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作者名：さくら 樹里
| 作成日時：2020年2月16日 1時
